「いつも有難うございます、文兵衛さま」
「デキモノに効く薬を仕入れまして――」

 朗らかな応対をする文兵衛の周りには、常に人が集まっていた。声をかけてくる人はみな文兵衛に信頼を寄せている。

「お前さんはよう……」
「ひっ⁉」
 
 背後から声をかけられ飛び上がってしまう。番頭の男は「そんなに驚くな」と僕を宥めすかした。

「お、お疲れさまです」
「若旦那、恰好ええだろ?」

 照れながら首を縦に動かす。番頭は周囲を見渡し、客入りはぼちぼちですな、と腕を組んだ。

「きょうも見るだけかい」
「え、あ……はい」
「ええの?」
「はい」
「ハイしか言えんのか」
「はい……」
「おい、シロネ」