手をとり表裏を確認し、次に顔をぐいと持ち上げられた。生気に満ちた字七の瞳が心配そうに僕を見つめていた。

「顔色がひどく悪い」
「あの、あの……」
「怪我はないんだな?」
 字七はひらりと庭へ降り硝子をまとめて片し、二輪を手にして戻った。
着物の裾で土埃をはらう。

「花のことはいい。貰い物だけれども、君の身体が無事であることがよっぽど重要だ」
「あ、あの……」

 茎が少し折れた君懸草を僕に持たせ、そのまま肩を抱き寄せられた。夫婦であれば大変好ましいことであるが隣にいるのは義弟である。
 動揺を隠しきれずに目を泳がせた。