一年を通じて自分の指はあかぎれていて、薬草の固い繊維が無数に突き刺さっていた。いくらすすいでも、煤けた色は抜け落ちない。
嫁ぎ先の広間で、このひび割れた手だけが浮いて見えた。膝の上で拳を握りながら、僕はごくりと生唾を飲む。
隣にいる人――褐色の美丈夫――は、とても大人びた方だ。きめ細やかな肌はまるでつややかなどんぐりのようだった。育ちの良さは、肌艶に出るのだと感じる。
背丈もゆうに頭一つは高い。思わず感嘆し「ほー」と言いかける。が、いけない、と口をつぐむ。
ボロを出さないようにしゃんとしなくては。