継母は、僕だけでなく家族や職人などにもはっきりとした物言いをする女性だった。二人に背を向ける。
本当のお母さんが死んだあと、生家にあったはずのささやかで幸せな日常は終わってしまっていた。
薄暗い蔵の隅に追いやられ、父の真意も知ることなく、ただ毎日、薬草の根をむしりつづける。3日ごとに職人さんが、根を載せた箕を蔵から持ち出してゆく。
一瞬だけ、わずかな隙間から明るい外が見えた。それは夕暮ればかりだったけれど、橙色の太陽、草木の香りで、シロネは人としての尊厳を保つことができた。