文兵衛は無言で白米をかきこんでいた。普段から立派な朝食を食べているのだろうか。特段感動もせずに、ものの寸刻で茶碗を空にした。梅干しの種をぷっと吐き出した。

「お前、今日から店に立て」
「……っ、きききき急です、ね」

 豆を喉に詰まらせそうになった。白湯で流し込み姿勢を正す。
不安だ。わかりやすく表情に出ている自分を宥めるように、文兵衛は話を続けた。

「うちの仕事を知ってもらうためにも、店先に前掛けを結んで立ってもらう。大丈夫だ、ほかの丁稚らを真似ていればできる。分からないことがあれば、俺を呼べばいい」

 湯呑を置いた文兵衛にムッとした顔をされる。