視線を合わせられない。文兵衛は細い眼を冷ややかに光らせているのだろう。
僕は身じろぎ一つできずに、ちいさく唇をかんだ。
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白米はつやつやと光り、みそ汁は故郷と違う色をしていた。


「……いただきます」
「ああ」

 ぎこちない動きで手を合わせ、旦那さまの顔色をうかがいながら朝食に箸をつける。品は米と汁だけではない。豪華なことに漬物とひじきの煮物までついていた。

 鮮やかな紫の漬物をぽりっとかじると、華やかに紫蘇が香りたち今まで食べたことのないおいしさに目を丸くした。ひじきも太くてうま味が濃く、いちいち感動してしまって一向に皿が空かない。