ふっと花の匂いが漂う。屋敷は春で満ちていた。そう、ちょうど満開の桜の時期だ。この部屋の雨戸をあけると、夜桜が見られるだろうか、と想像してみる。けれども僕には「試してみる」という選択肢が存在しなかった。