「あっという間、ですね」
「十年後も、黄泉の国へも、一緒にいてくれるか」

 文兵衛は抜けるように青い空を見上げながらいう。僕は同じように見上げるふりをして、隣に立つ旦那さまを盗み見た。

「……それじゃあ、長生きしてくださいね」

 藍色の袖を握る。気付いた文兵衛は、僕の額に口づけを落とした。