ちょうど日が差しこんだ光景は、息を呑むほど美しかった。

「……南天だ」
「ご存じでしたか」

 なんだ、旦那さまはすでに……。

「っ、あ、ちょっと、えっ」

 誰が通るかもわからないのに、文兵衛に抱き寄せられる。とっさにあたりを見回した。
ひっそりと静まり返った裏庭は、ふたりきりの別世界だった。木は風に揺れ、小さな花弁がひらひら散っている。

「南天の花は、お前に見つけてもらうために、頑張って咲いていたんだよ。そう肩を落とすんじゃない」

 な? と文兵衛は見つめてくる。

「だと、嬉しい……です」

 頭をぽんぽんと撫でられ、照れ隠しに顔をうつむけた。

「お前がウチにきて一年か」