一年の時が経ても、ふたりの愛は増すばかりであった。

「っ、とっ、と……」

 小鳥のさえずる朝、腕をぷるぷるしながら僕はのれんをかけていた。毎朝のことだが、開店準備は骨が折れる。

「ちんまいなあ」

 屈託なく笑いながら、文兵衛が手をひょいと伸ばした。苦労していたのが嘘のようにあっさりと終わる。

「ありがとうございます」

 さわやかな風に、藍色ののれんがはためいた。近所の猫が僕の足元にまとわりついてくすぐったい。

「あ、そうだ。旦那さま、素敵な花を見つけたんです」

 手を引き、通用口から屋敷の裏へ入ると、純白と黄色の星屑が視界いっぱいに広がった。