つややかな白絹は、自ら光を放っているようだった。白無垢に着飾らせられた僕はおどおどと、実父と継母の前へ歩み出た。
ふたりの反応は鈍い。否、腫物を扱うような態度であった。きっと僕のせいだ。継母にとって、僕は長い間蔵に閉じ込めていた、前妻の長男だから。そして、嫁ぎ先が有名な薬種問屋「南天健寿堂」だから。

――それだけじゃないか。

手元に舞いおちた桜の花びらに視線を落とす。だが、様々な考えを巡らせたところで、遠巻きな態度の真意など僕には何ひとつ分からない。

「川口のおばさんを覚えてるか?」