そろそろ中に戻ろうと戸に手をかけると、水野に引き止められる。

「結婚してないんでしょ」

今までで一番真剣な声だった。

「なんで知ってるの？」

「さっきあいつらに聞いた」

指差した先は店の中だ。
まだまだ盛り上がっているのが外まで容赦なく聞こえている。

「今日は矢田が来るって聞いたから来たんだ」

水野が久々に俺たちの前に姿を見せた理由は俺の予想を遥かに超えていて、口が勝手にぽかんと開いてしまう。

季節の変わる途中で、風が冷たい。
たぶん冷たいのは体だ。
緊張している。

今、どうにかしないと終わってしまう。

後悔する。
二人ともそう思っているのがわかった。
息が止まりそうだ。

そしてまた水野の唇がゆっくり言葉を紡ぐのを見つめる。


「俺たち、今からでもやり直せる？」