その夜は、家に着き玄関のドアを開けたとたん涙が出た。

パーソナリティーが曲の終わりに言ったタイトルの意味も、
俺には痛いほど伝わる。

ベースは部屋の隅で埃をかぶっている。
サークルを引退してからは練習する意味が感じられず全く触っていない。

それでも部屋を引っ越すときにも捨てられず持ってきてしまう自分がいた。
思い出を捨てられない、なんて綺麗なことじゃない。

これは固執だ。そして反省だ。


大人になってやっとわかる。

水野は天才そのものではない。
普通の人間だ。
普通の中に少し天才な部分があるだけだ。

あの日俺は水野の普通の部分を無視して突き放した。
才能だけ突き放したつもりだった。

ただの言い訳。

水野が傷つくとわかって傷つけた。