入社一年目、俺が任されたのは想定外の営業職だった。

就職先は企業向けの事業を行っている会社で、
俺の仕事は自社と企業をつなぐ架け橋になることだった。
仲をとり持つようなイメージで顧客に接する。

その中で、「ハリーアップの水野と昔バンドを組んでいた」は
初めにぐっと興味を持ってもらえる鉄板トークだった。
名前を使うことに罪悪感もあったけど、
いつの間にか慣れて、
そしたらそれを使わなくても契約が取れるようになっていた。

営業という仕事は人と関わる仕事だが
基本車移動が多く、移動中や休憩時間など案外一人で息をつける時間も多い。

社内にいても、会議がなければ黙々と事務作業をしている。

この仕事が肌に合っている。
そう感じるまで時間は一年とかからなかった。