アパートまでの道すがら、俺は選んだ。
「いいじゃん。やれよ。またとないチャンスだぞ。大きい事務所だし」
「お前はそれでいいのかよ」
同じバンドのメンバーを連れてきたいならそれでもいいと、事務所の人は言っている。
それほど水野の才能に惚れ込んでいるのだ。
「俺?プロになるつもりなんてないよ、器じゃないし」
「ベースはお前だろ」
「作詞も作曲もお前だろ。
俺はたまたまクラスが一緒で、たまたま兄貴のベースが家にあっただけじゃん。
俺はついていけない。
普通に就職して結婚して、普通の人生送るよ」
「は?」
感情をむき出しにして怒る水野を諭すように、落ち着いたトーンで語りかける。
「水野、才能あるんだから、やれよ」
俺の言葉を聞いて、水野も選び、選ぶことを諦めた。
「もういいよ」
くるりと俺に向けた背を、振り返ることなく俺だって歩き始める。
今までありがとう、くらい、言えば良かった。
◇
そのころちょうどサークルの後輩のバンドにベースの欠員が出ていた。
俺はサポートメンバーとして加入した。
正式な加入も打診されたが、就職活動を理由に断った。
そうして俺は、俺の思う普通の道を選んだ。
「いいじゃん。やれよ。またとないチャンスだぞ。大きい事務所だし」
「お前はそれでいいのかよ」
同じバンドのメンバーを連れてきたいならそれでもいいと、事務所の人は言っている。
それほど水野の才能に惚れ込んでいるのだ。
「俺?プロになるつもりなんてないよ、器じゃないし」
「ベースはお前だろ」
「作詞も作曲もお前だろ。
俺はたまたまクラスが一緒で、たまたま兄貴のベースが家にあっただけじゃん。
俺はついていけない。
普通に就職して結婚して、普通の人生送るよ」
「は?」
感情をむき出しにして怒る水野を諭すように、落ち着いたトーンで語りかける。
「水野、才能あるんだから、やれよ」
俺の言葉を聞いて、水野も選び、選ぶことを諦めた。
「もういいよ」
くるりと俺に向けた背を、振り返ることなく俺だって歩き始める。
今までありがとう、くらい、言えば良かった。
◇
そのころちょうどサークルの後輩のバンドにベースの欠員が出ていた。
俺はサポートメンバーとして加入した。
正式な加入も打診されたが、就職活動を理由に断った。
そうして俺は、俺の思う普通の道を選んだ。