正直に言うと、それまで水野よりギターが上手いやつ、歌が上手いやつは部に何人もいた。
ただ、作る楽曲のオリジナリティと舞台上での風格は他と一線を画していた。

ファンの数はライブを行うごとに増え、比例するように水野の演奏は上手くなる。
そして楽曲に対する要求はどんどん増えていった。
俺はついていけても、サポートで入ってくれるメンバーに対してそれは酷だった。

「だからそこはもっとバーンって感じの音だよ!わかるだろ!」

特別難しいことを言っているわけではないのだ。

ただ水野が焦れば焦るほど、
理解してもらおうとする配慮がぽろぽろと欠けていくのがわかった。