空いた時間はいつも楽器を触っていた。

酒を飲んで、タバコを吸って、肺まで届く前に吐いて、最近流行りの曲を聞きにCDショップへ走る。
そんなんだからバイト代もすぐ消える。
いつまでも安物のギターとベースで、世界で一番イカした音楽を鳴らし続けた。


才能の原石みたいな水野は、いつも赤い顔してキラキラヘラヘラ笑っていて楽しそうだった。
でも、夜になるとその限りではない。

仲間たちと夜中まで遊び尽くし、解散後はだいたい、水野が酔ったまま俺の家に泊まる。

床に寝そべって話をしながら、気がつくと同じ布団で眠っていた。
一人用の敷布団では、お互い半身が外に出ていたけど。

たまの夜中に、隣で泣いているのが聞こえた。

体を縮こまらせて、歯を食いしばる音も聞こえた。

悪い夢でも見ているのだろうか。
それとも現実に、何か悩みでもあるのか。

触れる肌と肌の熱さが全てを解決してくれることを祈った。