大学生になってから水野は作曲をするようになっていた。

壁の薄いアパートでギターをかき鳴らす音が聞こえる。

タバコを吸って、缶ビールを一缶飲み干して一眠り。
朝が来たと思ったら壁をドンドン叩く音がする。

曲ができた合図だった。


そういうことが何曲か続いたとき、俺は言った。

「詞は書かないの?」

「詞?」

「うん」

「誰が歌うの」

「お前」

「俺歌下手じゃん」

「そうか?まあ上手かねえけど」

「よしわかった。それ、やる。それでさ、今度の発表会でやろうよ!学祭でも!」

水野は一層やる気になって、音楽にのめり込んだ。