次第に、天気が悪くても、好きなバンドが新曲をぱったり出さなくなっても、
水野と一緒にいる放課後が増えた。

「矢田ってなんで帰宅部なの?」

「俺帰宅部じゃないよ。文芸部」

「行ってないじゃん。毎日俺といるくせに」

「幽霊部員。入って1回も行ってない」

「俺は、1年のときサッカー部だった」

「やめたの?」

「うん。ノリが合わなくて」

「水野が合わせられないノリってどんなノリだよ」

「なんだよそれ」

「水野が合わないなら俺も絶対合わないな」

時に間を挟みながら、話したい話題を話したいときに持ち出せた。

他にいえば、俺たちが共通で聞いているラジオ番組があった。
パーソナリティーに彼女がいるならどんなやつか、とか、あの番組は選曲のセンスが狂っているとか、そんなくだらない会話をしていた気がする。

そしていつの間にか影踏みをして遊んで、影がなくなったら家路についた。