「大きさによって?」

 僕がアーシャの言葉に首を傾げていると、アーシャは、自分の背負ってきた籠を顎でしゃくる。

「俺が持ってきたAsh(アッシュ)の量ならば、人一個体分になる。お前が持ってきた量なら、せいぜい、物一個体分だ」

 アーシャの説明によると、Ashの量によってAsh clock(アッシュ・クロック)の大きさが変わり、それは、人、動物、虫、植物、そして物と、徐々にその大きさが小さくなるらしかった。

 一人前のAsh clockの作り手には、常にどんなAsh clockを作るのかの啓示があるらしい。しかし、まだ僕には無い。それはもちろん、僕が一人前じゃないから。

 まずは、アーシャに倣って、初めてのAsh clockを作ってみることにした。

 削り出したAshのうち、そのまま中に入れる1割分だけを残し、あとは全てを溶鉱炉で溶かす。高熱でドロドロになったら取り出し、素早く練り混ぜ、瓢箪型に形成する。

 この時にくびれの部分を細くすれば、零れ落ちるAshの量が少しずつとなり、時を刻むのが長くなるらしい。逆に、太くすれば、それは、短命のAsh clockとなる。

 どのような太さのものを作るのかは、その時々で、作り手に委ねられているようだった。

 瓢箪型が出来たら、一旦冷まし、粗熱が取れたところで、残してあった1割分のAsh(アッシュ)を流し入れ、開口部を再度加熱して閉じる。

 これで一個体分のAsh clock(アッシュ・クロック)の完成である。

 小さなAsh clock1つを作り上げるのに、僕はかなりの時間を要したが、それでもなんとか作り上げることができた。

 アーシャは、僕の作ったAsh clockを手に取り、上から下から、横から、正面からと様々な方向からその出来を確認する。

「う〜ん。まぁ、不恰好だけど、いいんじゃないか」

 そう言って、先に完成していたアーシャの作ったAsh clockの隣に並べる。その二つは、大きさも、出来映えも、全く違っていた。

「僕、全然ダメですね……」

 目に見えて落ち込む僕を、アーシャは軽く笑い飛ばす。

「当たり前だ。お前は、イレギュラーな跡継ぎ候補で、俺は一人前の作り手なんだ。一緒にするな」
「……そうですね……」
「でも……」

 肩を落とし、項垂れる僕にチラリと視線を向けてから、アーシャは、僕の初めてのAsh clockを再びしげしげと眺めた。

「これも個性だ。俺は、悪くないと思うぞ」

 僕は思わず顔を上げる。

「まぁ、一個体に時間かけ過ぎだけどな」

 アーシャは、僕にニヤリと笑いかけた。