一九三〇年、キャロライン・ルルイエ、失踪。
一八八七年、サン・ジェルマン・ルルイエ、失踪。
一八八六年、サン・ジェルマン・ルルイエ、パトリシア・ピークスと結婚。
一八七三年、パトリシア、サン・ジェルマンからブルーダイヤの指輪を受け取る。
一八七二年、パトリシアの父トーマス・ピークスが、美術集団シャーマーメイズ作製の風景画『失われし神殿都市』を画廊より購入…っと。
この時代は何やら謎めいた事件が多かったようだね。
ちょうどいい具合に当時のスクラップブックがぼくの手もとにある。
新聞紙から気になった記事を切り抜いて、ノートに糊で貼ったものだよ。
ネットのアーカイブなんてものがなかった時代には、こういうのを個人で作っていたんだ。
この記事なんか興味深いな。
どうやら地方紙のもののようだ。
【伝説のシー・モンクか!? グラスゴーの海岸に謎の巨大生物の死骸】
あー、紙の傷みが激しくて部分的にしか読めないな。ええと。
『・嵐の翌朝、海洋生物の死骸と思しき巨大な物体がイギリスの大西洋側の海岸に漂着。
・強烈な腐敗臭。
・ぶよぶよした暗緑色の皮。』
次のページは翌日のだな。
【怪物、一夜にして消失】
『・地元の漁師の証言
「潮に流されたとは考えにくい」
・近隣住人の証言
「消えてくれて嬉しい。もう二度と見たくない」』
おや? こっちはタブロイド紙の記事だな。
【未明のロンドンに燃え盛る炎】
『昨夜未明、○○街○○‐○にて火災発生。
火元である○○宅が全焼。
この火事により一家五人と使用人二人が死亡。
犠牲となった○○の友人は、○○の父親が家族の反対を押し切って『嘆く巫女の肖像』を購入したことがこの悲劇の原因だと語った。』
【奇妙な偶然】
『ロンドンで火災が相次いでいる。
それもただの火事ではない。
一家全員が死亡するという悲惨な火事が三週間連続で起きているのだ。
出火元は書斎や廊下など火の気のない場所であり放火とは考えにくい。
何より奇妙なことに被害宅の三件全てで火事の直前に『嘆く巫女の肖像』を購入していたことが親族の証言や画廊の記録などから確認されているのである。
そのため相次ぐ火災は闇の巫女の呪いによるものだとする噂が広まっている。』
おおっと今度はロンドンタイムズの記事だ。
【真昼の惨劇!! 青年を大量殺人に駆り立てたものとは!?】
『本日昼過ぎ、悲鳴が聞こえたとの近隣住人からの通報を受けて駆けつけた警察官が、女性六名の遺体を発見。
遺体の輪の中にたたずんでいた男を殺人の容疑で逮捕した。
被害者は全員、注射器で生きたまま大量の血を抜かれたことによって失血死しており、現場からは血のにおいはほとんどせず、代わりに妙な魚臭さがただよっていたという。
死亡したのはいずれも美術集団シャーマーメイズに所属する画家。
現場となったのは同団体のアトリエである。
同団体による作品は「火事を招く呪われた絵画」と噂され、信じがたい話ではあるがその絵画を購入した家庭では実際に不審火が相次いでいる。
被疑者の知人は今回の大量殺人事件の動機を、呪いによる十二件目の火災によって婚約者を殺されたことへの復讐ではないかと語った。
逮捕された男は容疑を否認。
自分がアトリエを訪れた時には画家達はすでに死亡していたと供述している。
シャーマーメイズには総勢十二名の画家が所属していたが、惨劇を免れたはずの残り六名の行方は不明である。
犠牲者から抜き取られたはずの血液も発見されていない。』
ふむ。タブロイド紙とロンドンタイムズはどちらも同じ絵画についての記事だが……
ねえきみ、このスクラップブックの作り主は、なぜグラスゴーの奇妙な漂着物の記事まで一緒のノートにまとめたんだと思う?
一八八七年、サン・ジェルマン・ルルイエ、失踪。
一八八六年、サン・ジェルマン・ルルイエ、パトリシア・ピークスと結婚。
一八七三年、パトリシア、サン・ジェルマンからブルーダイヤの指輪を受け取る。
一八七二年、パトリシアの父トーマス・ピークスが、美術集団シャーマーメイズ作製の風景画『失われし神殿都市』を画廊より購入…っと。
この時代は何やら謎めいた事件が多かったようだね。
ちょうどいい具合に当時のスクラップブックがぼくの手もとにある。
新聞紙から気になった記事を切り抜いて、ノートに糊で貼ったものだよ。
ネットのアーカイブなんてものがなかった時代には、こういうのを個人で作っていたんだ。
この記事なんか興味深いな。
どうやら地方紙のもののようだ。
【伝説のシー・モンクか!? グラスゴーの海岸に謎の巨大生物の死骸】
あー、紙の傷みが激しくて部分的にしか読めないな。ええと。
『・嵐の翌朝、海洋生物の死骸と思しき巨大な物体がイギリスの大西洋側の海岸に漂着。
・強烈な腐敗臭。
・ぶよぶよした暗緑色の皮。』
次のページは翌日のだな。
【怪物、一夜にして消失】
『・地元の漁師の証言
「潮に流されたとは考えにくい」
・近隣住人の証言
「消えてくれて嬉しい。もう二度と見たくない」』
おや? こっちはタブロイド紙の記事だな。
【未明のロンドンに燃え盛る炎】
『昨夜未明、○○街○○‐○にて火災発生。
火元である○○宅が全焼。
この火事により一家五人と使用人二人が死亡。
犠牲となった○○の友人は、○○の父親が家族の反対を押し切って『嘆く巫女の肖像』を購入したことがこの悲劇の原因だと語った。』
【奇妙な偶然】
『ロンドンで火災が相次いでいる。
それもただの火事ではない。
一家全員が死亡するという悲惨な火事が三週間連続で起きているのだ。
出火元は書斎や廊下など火の気のない場所であり放火とは考えにくい。
何より奇妙なことに被害宅の三件全てで火事の直前に『嘆く巫女の肖像』を購入していたことが親族の証言や画廊の記録などから確認されているのである。
そのため相次ぐ火災は闇の巫女の呪いによるものだとする噂が広まっている。』
おおっと今度はロンドンタイムズの記事だ。
【真昼の惨劇!! 青年を大量殺人に駆り立てたものとは!?】
『本日昼過ぎ、悲鳴が聞こえたとの近隣住人からの通報を受けて駆けつけた警察官が、女性六名の遺体を発見。
遺体の輪の中にたたずんでいた男を殺人の容疑で逮捕した。
被害者は全員、注射器で生きたまま大量の血を抜かれたことによって失血死しており、現場からは血のにおいはほとんどせず、代わりに妙な魚臭さがただよっていたという。
死亡したのはいずれも美術集団シャーマーメイズに所属する画家。
現場となったのは同団体のアトリエである。
同団体による作品は「火事を招く呪われた絵画」と噂され、信じがたい話ではあるがその絵画を購入した家庭では実際に不審火が相次いでいる。
被疑者の知人は今回の大量殺人事件の動機を、呪いによる十二件目の火災によって婚約者を殺されたことへの復讐ではないかと語った。
逮捕された男は容疑を否認。
自分がアトリエを訪れた時には画家達はすでに死亡していたと供述している。
シャーマーメイズには総勢十二名の画家が所属していたが、惨劇を免れたはずの残り六名の行方は不明である。
犠牲者から抜き取られたはずの血液も発見されていない。』
ふむ。タブロイド紙とロンドンタイムズはどちらも同じ絵画についての記事だが……
ねえきみ、このスクラップブックの作り主は、なぜグラスゴーの奇妙な漂着物の記事まで一緒のノートにまとめたんだと思う?