会場が暗転し、音楽が流れ始める。
―キャー!!
客席が浮足立つ。
―パンパンパン!
ステージ上の花火が弾けた。一層歓声が大きくなる。
―ワー!!!
―キャー!!!
 ワールドツアーに重点を置く年がやってきた。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、南アメリカと、1年をかけて世界中を回るツアーを行うSTE。
 しかし、音楽が始まっているのに、なかなかSTEがステージに姿を現さない。
「なんで出て来ないの?」
「どうしたの?」
観客席のフェローがザワザワし始めた。

 一方、舞台の裏では。
「そろそろ時間だ。」
植木がそう言うと、
―キャー!!!
歓声が聞こえて来た。
「よし、行くぞ!」
流星が言い、
「おう!」
とSTEのメンバーが答える。7人は楽屋を出て、階段を下り、また下り、地下通路へ出た。音楽が始まる。
「あ、やべえ、もう始まっちまったぞ。」
篤が言う。大樹が、
「間に合うのか?」
と言って皆の顔を見回すと、
「走るしかない!」
と、涼が言い、7人は走り出した。
「速く速く!」
瑠偉が言う。
「待ってくれー!」
流星が必死に言う。
「頑張れー、あははは。」
光輝がそう言い、7人は懸命に、しかし楽しそうに走った。

 前奏が流れ、もう歌が始まる、という時、ひと際パン!と大きな花火が弾けた。そして、歌と同時にSTEのメンバーが、前のステージではなく、客席の中央からせり上がって来たステージに乗って姿を現した。
「キャー!!!」
― 目の前にある事が 全て正しいとは限らない
まだ見ぬ何かが 突然目の前に現れるかもしれない
信じよう 未来を 信じよう 自分を
可能性を 
もう 打つ手がないと思っても
明日 何があるか分からない
もう一日 頑張ってみよう
もう一日 待ってみよう
予想外な何かが
明日 やってくるかもしれないから ―

 前面のステージに照明を当て、花火を上げ、それでいて中央の地下からSTEが出て来るという演出。
 思考を凝らした演出を、それぞれのステージごとに繰り広げた。今回のツアーは「意外性」を重視した。冒頭に歌った「unexpected(アンエクスペクティッド 予想外)」という歌の世界観を現したのだ。

 「みんな、今日は楽しかった?」
流星が呼びかけると、フェローは、
「キャー!」
と歓声を上げた。碧央が、
「僕たちからのメッセージ、受け取ってくれたかな?」
と言うと、フェローはまた、
「ワー!!」
と沸いた。光輝が、
「もし、何かに行き詰って、どうしようもないと思った時、このコンサートの事を思い出してください。」
と言い、瑠偉が、
「何があっても、生きる事を諦めないで。」
と言った。

 彼らはこれからも地球を、そしてその上に生きる人々を、ずっと守っていく。