STEは、アルバム作りを始めた。会議室などもあるが、基本リビングでそれぞれ紙に書いたりノートパソコンに打ち込んだりして作業していた。
何度も言うが、光輝はメンバーとの接触が多めである。なので、光輝が誰にくっついていても、メンバーは気にしない。だが、ふと大樹が思いを留め、こっそり涼にこう言った。
「なあ、光輝と流星くんって、最近ギクシャクしていたんじゃなかったっけ?」
「え?」
そう言われて、涼は部屋の中を見回し、光輝を見つけた。すると、流星にべったりくっついて、流星が打ち込んでいるパソコン画面を見ていた。時々言葉を交わしているようで、仕事をしているのだろうが、2人の表情は穏やかだった。
「そういえば、そうだよな。仲直りしたのかな……って、おい、流星くんは光輝の事を……。」
涼が思い出した、という風に言った。
「ああ。」
大樹が頷く。
「じゃあ、もしかして、2人は両想いに?」
大樹と涼は改めて流星と光輝を見た。すると、2人は顔を見合わせて笑い合っていた。
「2人の世界だな。」
大樹が言った。
「へえ、光輝は篤くんだと思っていたけどな。」
涼が言う。
「篤くんは、相変わらず瑠偉だもんな。瑠偉は相手にしてないけど。」
大樹が言った。
「瑠偉は碧央だもんなぁ。たぶん、あれは本物だよ。みんな、一時期ギクシャクしてからラブラブになるんだなあ。」
と、涼が言った。
「本当だな。しっかし、再びギクシャクして欲しくはないもんだ。グループ内でくっついたの離れたのってされたんじゃ、困るよ。」
大樹がそう言うと、
「まあまあ、若いんだからいいじゃないの。」
涼はそう言って大樹の肩をポンポンと叩いた。
STEは、平和祈念コンサートを終えて帰国したが、それは植木が元々計画していた事だった。つまり、政府との交渉の結果、アフリカ滞在を辞めて帰国したというわけではなかった。だから、政府が約束を全て守っていなかったのを不問にして、帰国したのである。
STEの新たなアルバムが発売された。売上のほとんどを寄付に回すのは、今までと同じ。STEには事務所の後輩というものがいない。植木は、芸能事務所を発展させていこうとは考えていないのだった。もしアイドルとしてやって行けなくなったら、STEメンバーを含めた事務所のスタッフ全員で、また新たな事を始めればいいと思っていた。やる事はただ1つ、地球を守る事。「Save The Earth」の名でずっと続けていくつもりだった。
「さっすが、流星くん。こういう歌詞にするとは!」
そう、瑠偉が絶賛、感嘆したのは「Energy(エナジー)」という新曲。その歌詞の一部が以下である。
― energy energy energy!
もっとだ もっとだ まだまだ足りねえ
クリーンenergy Come on!
今のままじゃ ゼロになんてできないぜ
企業努力次第? それじゃダメだ 間に合わねえ
どこに金を使うんだ? 使うとこはここだぜ
頭を使え! 悪いこたぁ言わねえ 使うとこはここだぜ!―
「最近のSTEは、図に乗っているよね。」
閣議が始まると、総理大臣はまずこう言った。
「は?」
文部科学大臣が反応した。
「新曲のエナジー、聞いたか?あれはどう考えても、政府を批判しているじゃないか。」
「はあ。」
文部科学大臣が渋々答えると、経済産業大臣が、
「総理のおっしゃる通りです。私も聴いて驚きましたよ。」
と言った。
「アイドルのくせに、政治に口を出すとは小賢しい。」
総理大臣が言うと、防衛大臣も、
「全くです。核禁条約に関しても、暗に批准しろと言っているようなものです。その圧力がすごい。ファンを使ってくるのですから、始末が悪い。」
と言った。総理大臣が、
「ファンを使ってくるとは?」
と聞くと、防衛大臣が説明した。
「夏のコンサートツアーの辺りから、防衛相のホームページに、日本も今すぐ核禁条約に批准しろという内容で、毎日1万件の苦情が寄せられているんです。」
「1万件も?毎日ですか。」
経済産業大臣が驚いた声を発した。防衛大臣は、
「同じ人物が何回も書き込んでいるのだとは思いますがね。」
と答えた。総理大臣は、
「それもこれも、あの植木とかいう社長が入れ知恵しているんだろうね。彼さえいなければ、STEはもっと使えるんじゃないのかね。」
と言った。文部科学大臣が、
「いなければ?」
と質問すると、総理大臣は、
「彼を消してしまえば、STEはどうなる?」
と、逆に質問した。すると防衛大臣が答えた。
「他の芸能事務所に行くのではないでしょうか。そうしたら、環境問題だ何だと言わずに、普通にアイドル活動をするのではないでしょうか。」
「そうすれば、またインバウンド効果が期待できるよね。」
総理大臣がそう言うと、文部科学大臣は、
「ですが、消すというのは……。」
と、冷や汗をかきながら言った。総理大臣は、
「社会的に抹殺すればいいのだよ。人間、叩けば埃くらい出るもんだ。徹底的に調べ上げて、逮捕しちゃえばいいんじゃないの?」
と言った。文部科学大臣は少し顔を明るくさせ、
「な、なるほど。分かりました。調べさせます。」
と言った。総理大臣は、
「うん、そうしてくれ。」
と答えた。
1週間後の閣議。総理大臣が言った。
「まだ、STEの社長が捕まったというニュースを聞かないけど?」
すると文部科学大臣が、
「は、それが、いくら調べても植木氏については何も出てきませんでした。」
と答えた。総理大臣が、
「そんな事はないだろう。過去まで遡ったのか?」
と言ったが、文部科学大臣は、
「はい、もちろんです。」
と答えた。経済産業大臣も、
「あれだけ成功して、大きな額の金を動かしているんだ。何かあるでしょうよ。」
と言ったが、文部科学大臣は、
「いえ、それが、何も。」
と答えるしかなかった。総理大臣は、
「本人になければ親とか、妻とか。」
と言ったが、
「両親は既に他界しています。一応調べましたが、これと言って何も出ませんでした。妻はいません。独身です。」
と、文部科学大臣は答えた。総理大臣は更に言った。
「隈なく調べた上で、ないというのだな?そんな奴がいるのか……。では仕方がない。なければ作るのみだ。脱税とか横領とか、適当に作りなさい。そして、芸能プロダクションにはSTEを引き取るように差し向けてさ。」
そんな総理大臣の発言で、実際に植木は逮捕されたのである。
何度も言うが、光輝はメンバーとの接触が多めである。なので、光輝が誰にくっついていても、メンバーは気にしない。だが、ふと大樹が思いを留め、こっそり涼にこう言った。
「なあ、光輝と流星くんって、最近ギクシャクしていたんじゃなかったっけ?」
「え?」
そう言われて、涼は部屋の中を見回し、光輝を見つけた。すると、流星にべったりくっついて、流星が打ち込んでいるパソコン画面を見ていた。時々言葉を交わしているようで、仕事をしているのだろうが、2人の表情は穏やかだった。
「そういえば、そうだよな。仲直りしたのかな……って、おい、流星くんは光輝の事を……。」
涼が思い出した、という風に言った。
「ああ。」
大樹が頷く。
「じゃあ、もしかして、2人は両想いに?」
大樹と涼は改めて流星と光輝を見た。すると、2人は顔を見合わせて笑い合っていた。
「2人の世界だな。」
大樹が言った。
「へえ、光輝は篤くんだと思っていたけどな。」
涼が言う。
「篤くんは、相変わらず瑠偉だもんな。瑠偉は相手にしてないけど。」
大樹が言った。
「瑠偉は碧央だもんなぁ。たぶん、あれは本物だよ。みんな、一時期ギクシャクしてからラブラブになるんだなあ。」
と、涼が言った。
「本当だな。しっかし、再びギクシャクして欲しくはないもんだ。グループ内でくっついたの離れたのってされたんじゃ、困るよ。」
大樹がそう言うと、
「まあまあ、若いんだからいいじゃないの。」
涼はそう言って大樹の肩をポンポンと叩いた。
STEは、平和祈念コンサートを終えて帰国したが、それは植木が元々計画していた事だった。つまり、政府との交渉の結果、アフリカ滞在を辞めて帰国したというわけではなかった。だから、政府が約束を全て守っていなかったのを不問にして、帰国したのである。
STEの新たなアルバムが発売された。売上のほとんどを寄付に回すのは、今までと同じ。STEには事務所の後輩というものがいない。植木は、芸能事務所を発展させていこうとは考えていないのだった。もしアイドルとしてやって行けなくなったら、STEメンバーを含めた事務所のスタッフ全員で、また新たな事を始めればいいと思っていた。やる事はただ1つ、地球を守る事。「Save The Earth」の名でずっと続けていくつもりだった。
「さっすが、流星くん。こういう歌詞にするとは!」
そう、瑠偉が絶賛、感嘆したのは「Energy(エナジー)」という新曲。その歌詞の一部が以下である。
― energy energy energy!
もっとだ もっとだ まだまだ足りねえ
クリーンenergy Come on!
今のままじゃ ゼロになんてできないぜ
企業努力次第? それじゃダメだ 間に合わねえ
どこに金を使うんだ? 使うとこはここだぜ
頭を使え! 悪いこたぁ言わねえ 使うとこはここだぜ!―
「最近のSTEは、図に乗っているよね。」
閣議が始まると、総理大臣はまずこう言った。
「は?」
文部科学大臣が反応した。
「新曲のエナジー、聞いたか?あれはどう考えても、政府を批判しているじゃないか。」
「はあ。」
文部科学大臣が渋々答えると、経済産業大臣が、
「総理のおっしゃる通りです。私も聴いて驚きましたよ。」
と言った。
「アイドルのくせに、政治に口を出すとは小賢しい。」
総理大臣が言うと、防衛大臣も、
「全くです。核禁条約に関しても、暗に批准しろと言っているようなものです。その圧力がすごい。ファンを使ってくるのですから、始末が悪い。」
と言った。総理大臣が、
「ファンを使ってくるとは?」
と聞くと、防衛大臣が説明した。
「夏のコンサートツアーの辺りから、防衛相のホームページに、日本も今すぐ核禁条約に批准しろという内容で、毎日1万件の苦情が寄せられているんです。」
「1万件も?毎日ですか。」
経済産業大臣が驚いた声を発した。防衛大臣は、
「同じ人物が何回も書き込んでいるのだとは思いますがね。」
と答えた。総理大臣は、
「それもこれも、あの植木とかいう社長が入れ知恵しているんだろうね。彼さえいなければ、STEはもっと使えるんじゃないのかね。」
と言った。文部科学大臣が、
「いなければ?」
と質問すると、総理大臣は、
「彼を消してしまえば、STEはどうなる?」
と、逆に質問した。すると防衛大臣が答えた。
「他の芸能事務所に行くのではないでしょうか。そうしたら、環境問題だ何だと言わずに、普通にアイドル活動をするのではないでしょうか。」
「そうすれば、またインバウンド効果が期待できるよね。」
総理大臣がそう言うと、文部科学大臣は、
「ですが、消すというのは……。」
と、冷や汗をかきながら言った。総理大臣は、
「社会的に抹殺すればいいのだよ。人間、叩けば埃くらい出るもんだ。徹底的に調べ上げて、逮捕しちゃえばいいんじゃないの?」
と言った。文部科学大臣は少し顔を明るくさせ、
「な、なるほど。分かりました。調べさせます。」
と言った。総理大臣は、
「うん、そうしてくれ。」
と答えた。
1週間後の閣議。総理大臣が言った。
「まだ、STEの社長が捕まったというニュースを聞かないけど?」
すると文部科学大臣が、
「は、それが、いくら調べても植木氏については何も出てきませんでした。」
と答えた。総理大臣が、
「そんな事はないだろう。過去まで遡ったのか?」
と言ったが、文部科学大臣は、
「はい、もちろんです。」
と答えた。経済産業大臣も、
「あれだけ成功して、大きな額の金を動かしているんだ。何かあるでしょうよ。」
と言ったが、文部科学大臣は、
「いえ、それが、何も。」
と答えるしかなかった。総理大臣は、
「本人になければ親とか、妻とか。」
と言ったが、
「両親は既に他界しています。一応調べましたが、これと言って何も出ませんでした。妻はいません。独身です。」
と、文部科学大臣は答えた。総理大臣は更に言った。
「隈なく調べた上で、ないというのだな?そんな奴がいるのか……。では仕方がない。なければ作るのみだ。脱税とか横領とか、適当に作りなさい。そして、芸能プロダクションにはSTEを引き取るように差し向けてさ。」
そんな総理大臣の発言で、実際に植木は逮捕されたのである。