光輝は誰に対しても、接触多めである。メンバーの誰に対しても、甘えるようにくっつく。普段は甘えているように見える光輝だが、誰かが困っている時や悲しんでいる時、弱っている時には、真っ先に気づいて駆けつける。それが光輝である。
デビューしてすぐの頃。流星はSTEのダンスの難しさ、激しさについて行けないと思って、悩んでいた。他の6人は元々運動や音楽をやっていて、リズム感があるし体力もあるが、流星の運動能力は普通で、音楽は特別やった事がなかった。
「流星くん、どうしたの?元気ないね。」
レッスンが終わり、それぞれが帰り支度をしている時、流星が座って靴紐をほどいていると、光輝が背中に乗っかって来て、そう声をかけて来た。
「え?そう見えるか?」
ただ、靴紐をほどいているだけなのに?
「うん。何か悩んでるの?」
光輝は優しく微笑んで、流星の顔を覗き込んでいる。
「いや、悩んでるってわけじゃないけど。ただ、ダンスが難しくて、俺にはついて行けないなって思って……。」
流星がそう言うと、
「ダンス、難しいよね。涼くんなんてすぐ出来ちゃうけど、僕たちがみんな同じように出来るわけないよね。ねえ、ちょっと残って、もう少し練習しない?」
光輝がそう言った。
「え?」
流星は驚いて顔を上げた。
「僕も、ちょっとできないところがあるんだ。付き合ってよ。」
「う、うん。」
光輝は7人の中でも、ダンスが上手い方だ。覚えも格別早い。だから、居残りなんてする必要はないのだ。流石に流星にも分かった。光輝が、自分の為に一緒に残ってくれるのだと。
そうして、一緒にダンスのおさらいをしてくれた。その時だけではない。新しい振りがつく度に、ダンスの苦手な流星につき合って、光輝がいつも残って教えてくれる。もう7年も、変わらず、優しく、教えてくれる。
いつしか、特別な感情が芽生えた。だが、前述した通り、光輝は誰に対しても接触多めなのである。誰かが困っていれば、すぐに駆けつけてハグをする。だから流星は、光輝が自分にだけ特別優しいのではないと分かっている。それでも、他のメンバーにくっつく光輝を見ると、気が気ではない。
「篤くーん!」
特に篤に対しては、まるでしっぽを振ってまとわりつく子犬のようだ。
「よーしよしよし。」
篤は、まとわりついてくる光輝を、普通に可愛がる。だが、そんな時に一番年下の瑠偉が通りかかったりすると、篤はすっと瑠偉に寄って行って、
「瑠偉、今日もキュートだな。」
などと言いながら、瑠偉のあごに指をあてたりする。
「あはは、何言ってんの?篤くん。」
瑠偉は、取り合わない。それを、光輝も分かってはいるのだが、悲しんでいる事は背中を見ても分かる。
そうだ、もし、もう1人の光輝がいたら、今の光輝を慰めに行くに違いない、と流星は思った。だが、やり方が分からない。拒絶されたらどうしよう、などと余計な事を考えてしまい、光輝のようにさらりと元気づけてやる事が出来ない。
それでも、今日こそは勇気を出そうと考えた流星。
「光輝、どうした?」
1人取り残されていた光輝の傍へ行き、流星は光輝の肩に腕を回した。流星は、光輝の顔を覗き込んでハッとした。瞳が揺れていた。今にも泣き出しそうだった。
「……光輝?」
「流星くん……。」
意外だった。きっと笑って「何でもない」と言うだろう、もしくは、何も言わずにさっさと行ってしまうような、拒絶反応を想定していた。それなのに、光輝は流星の胸に顔を埋めて、泣き出したのだ。
流星は、何も聞かなかった。泣いている理由はほとんど分かっていたから。ただ、光輝の背中を優しく叩き、光輝の気が済むまでそうして立っていた。
しばらくして、光輝が顔を上げた。
「何も聞かないの?」
ちょっと、照れたような笑いをした光輝。流星の胸がキュンと鳴る。
「あー、……聞いたら話してくれるのか?」
「えへへ。どうかな。聞きたい?」
流星、悩む。篤への想いなど、聞きたくない。だが、本音を聞いてみたい気もする。もしかしたら、思っていたのと違う内容かもしれないし。
「聞きたい。」
「ずいぶん間が空いたね。」
はははと笑う光輝。だが、すぐに笑いを引っ込めた。
「僕さ、なんか変なんだよね。どうも、篤くんが瑠偉にちょっかい出すのを見ると、悲しくなっちゃうんだよ。」
光輝が言った。
「うっ、ずいぶん正直に言うなあ。……え?」
流星が言った。
「え?って何?」
「本当に、分からないの?」
「何が?」
「だから、篤が瑠偉に、その、ちょっかいを出すのを見ると悲しくなっちゃう理由だよ。」
「うん。どうしてだろう。ヤキモチなのかなあ。僕には可愛いって言ってくれないから。」
光輝が小首を傾げながら言う。
「まあ、そうなんじゃない?」
流星が答えると、光輝は、
「僕は、瑠偉に嫉妬してるのかな。僕も可愛いって言ってもらいたいのかな。」
という。
「篤に?」
流星が問うと、
「分からない。」
と、光輝が答えた。
「光輝は可愛いよ。俺にとっては、瑠偉よりも光輝の方が……可愛い、けどな。」
言ってしまった流星である。
「え?ホント?」
「う、うん。」
「わぁ!嬉しいな。」
光輝は顔を輝かせた。
「流星くん、ありがとう!」
光輝は流星を抱きしめた。
「お、おう。」
光輝は嬉々として去って行った。あれ?もしかして篤じゃなくても、誰でも良かったのか?メンバー同士で可愛いとか、普通あまり言わないけど、篤がやたらと瑠偉には言うので、自分も誰かに言って欲しかっただけだったり?流星は混乱した。
デビューしてすぐの頃。流星はSTEのダンスの難しさ、激しさについて行けないと思って、悩んでいた。他の6人は元々運動や音楽をやっていて、リズム感があるし体力もあるが、流星の運動能力は普通で、音楽は特別やった事がなかった。
「流星くん、どうしたの?元気ないね。」
レッスンが終わり、それぞれが帰り支度をしている時、流星が座って靴紐をほどいていると、光輝が背中に乗っかって来て、そう声をかけて来た。
「え?そう見えるか?」
ただ、靴紐をほどいているだけなのに?
「うん。何か悩んでるの?」
光輝は優しく微笑んで、流星の顔を覗き込んでいる。
「いや、悩んでるってわけじゃないけど。ただ、ダンスが難しくて、俺にはついて行けないなって思って……。」
流星がそう言うと、
「ダンス、難しいよね。涼くんなんてすぐ出来ちゃうけど、僕たちがみんな同じように出来るわけないよね。ねえ、ちょっと残って、もう少し練習しない?」
光輝がそう言った。
「え?」
流星は驚いて顔を上げた。
「僕も、ちょっとできないところがあるんだ。付き合ってよ。」
「う、うん。」
光輝は7人の中でも、ダンスが上手い方だ。覚えも格別早い。だから、居残りなんてする必要はないのだ。流石に流星にも分かった。光輝が、自分の為に一緒に残ってくれるのだと。
そうして、一緒にダンスのおさらいをしてくれた。その時だけではない。新しい振りがつく度に、ダンスの苦手な流星につき合って、光輝がいつも残って教えてくれる。もう7年も、変わらず、優しく、教えてくれる。
いつしか、特別な感情が芽生えた。だが、前述した通り、光輝は誰に対しても接触多めなのである。誰かが困っていれば、すぐに駆けつけてハグをする。だから流星は、光輝が自分にだけ特別優しいのではないと分かっている。それでも、他のメンバーにくっつく光輝を見ると、気が気ではない。
「篤くーん!」
特に篤に対しては、まるでしっぽを振ってまとわりつく子犬のようだ。
「よーしよしよし。」
篤は、まとわりついてくる光輝を、普通に可愛がる。だが、そんな時に一番年下の瑠偉が通りかかったりすると、篤はすっと瑠偉に寄って行って、
「瑠偉、今日もキュートだな。」
などと言いながら、瑠偉のあごに指をあてたりする。
「あはは、何言ってんの?篤くん。」
瑠偉は、取り合わない。それを、光輝も分かってはいるのだが、悲しんでいる事は背中を見ても分かる。
そうだ、もし、もう1人の光輝がいたら、今の光輝を慰めに行くに違いない、と流星は思った。だが、やり方が分からない。拒絶されたらどうしよう、などと余計な事を考えてしまい、光輝のようにさらりと元気づけてやる事が出来ない。
それでも、今日こそは勇気を出そうと考えた流星。
「光輝、どうした?」
1人取り残されていた光輝の傍へ行き、流星は光輝の肩に腕を回した。流星は、光輝の顔を覗き込んでハッとした。瞳が揺れていた。今にも泣き出しそうだった。
「……光輝?」
「流星くん……。」
意外だった。きっと笑って「何でもない」と言うだろう、もしくは、何も言わずにさっさと行ってしまうような、拒絶反応を想定していた。それなのに、光輝は流星の胸に顔を埋めて、泣き出したのだ。
流星は、何も聞かなかった。泣いている理由はほとんど分かっていたから。ただ、光輝の背中を優しく叩き、光輝の気が済むまでそうして立っていた。
しばらくして、光輝が顔を上げた。
「何も聞かないの?」
ちょっと、照れたような笑いをした光輝。流星の胸がキュンと鳴る。
「あー、……聞いたら話してくれるのか?」
「えへへ。どうかな。聞きたい?」
流星、悩む。篤への想いなど、聞きたくない。だが、本音を聞いてみたい気もする。もしかしたら、思っていたのと違う内容かもしれないし。
「聞きたい。」
「ずいぶん間が空いたね。」
はははと笑う光輝。だが、すぐに笑いを引っ込めた。
「僕さ、なんか変なんだよね。どうも、篤くんが瑠偉にちょっかい出すのを見ると、悲しくなっちゃうんだよ。」
光輝が言った。
「うっ、ずいぶん正直に言うなあ。……え?」
流星が言った。
「え?って何?」
「本当に、分からないの?」
「何が?」
「だから、篤が瑠偉に、その、ちょっかいを出すのを見ると悲しくなっちゃう理由だよ。」
「うん。どうしてだろう。ヤキモチなのかなあ。僕には可愛いって言ってくれないから。」
光輝が小首を傾げながら言う。
「まあ、そうなんじゃない?」
流星が答えると、光輝は、
「僕は、瑠偉に嫉妬してるのかな。僕も可愛いって言ってもらいたいのかな。」
という。
「篤に?」
流星が問うと、
「分からない。」
と、光輝が答えた。
「光輝は可愛いよ。俺にとっては、瑠偉よりも光輝の方が……可愛い、けどな。」
言ってしまった流星である。
「え?ホント?」
「う、うん。」
「わぁ!嬉しいな。」
光輝は顔を輝かせた。
「流星くん、ありがとう!」
光輝は流星を抱きしめた。
「お、おう。」
光輝は嬉々として去って行った。あれ?もしかして篤じゃなくても、誰でも良かったのか?メンバー同士で可愛いとか、普通あまり言わないけど、篤がやたらと瑠偉には言うので、自分も誰かに言って欲しかっただけだったり?流星は混乱した。