Lost Gunアメリカツアーが始まった。この前の事もあるし、警備は厳重にしたいところだが、なんと、会場の警備員には、銃を携帯しないよう要請したSTE。その代わり、警備員は、防弾チョッキにヘルメット、盾を持つ姿である。機動隊のようだ。だが、例えば日本でコンサートをする際、警備員が拳銃を所持する事は法律上できない。STE側からすると何の抵抗もない事なのだ。それでも、スタッフからはだいぶ懸念の声が上がった。最終的に、社長の植木がSTEメンバーの意向を汲んで、銃の携帯無し、と決断したのである。
ツアーの合間に、テレビ出演にも応じた。アメリカの音楽番組にも出たし、日本の音楽番組に中継で参加したし、バラエティー番組の収録もした。アメリカの歌番組に出た時の事。
「STEのみなさん、次はどんな賞を狙いますか?」
MCにそう聞かれ、流星が、
「そうですね。ノーベル平和賞ですかね。」
と答えた。MCは、
「え?音楽の賞ではないんですか?ひょっとしてジョーク?」
と言ったので、流星は答えた。
「はい、ジョークです。ノーベル賞は狙っていません。あははは。でも、僕たちは世界を救うために結成されたグループですから、環境汚染や戦争から地球を守るのが目的です。音楽の賞をいただくのもありがたいのですが、それは手段であって目的ではないのです。」
「手段、というと?」
MCが問う。次は篤が答える。
「僕たちを知ってもらって、僕たちが訴える内容を聞いてもらう為の手段です。」
「だとすると、あなた方がパフォーマンスをするのは、訴えを聞いてもらう為なのですか?」
MCの問いに今度は涼が、
「そうです。」
と答えた。
「歌を聴いてもらう為、ダンスを見てもらう為ではなく?」
次の問いには碧央が、
「それは、あくまでも手段です。」
と言い、
「でも、歌やダンスは好きでしょう?」
今度は光輝が。
「もちろん、好きです。だから、こういう手段を選んだのです。」
「なるほど。」
MCが納得する。最後に瑠偉が、
「全力でパフォーマンスするので、是非見てください!」
と〆た。
コンサートは、銃の持ち込み禁止である。手荷物チェックはさせてもらう。それで、特に問題なくコンサートは行われていった。だが、STEがあるコンサート会場を出ようとした時、事件が起こった。
駐車場から車を出したSTE一行。駐車場の出口には、フェローがたくさん集まっていて、車に向かって手を振っていた。そこへ、ライフルを持った男が近寄ってきて、いきなり銃を乱射したのである。車の中にいても、銃声が聞こえた。
「ちょっと待って!車止めて!」
碧央が叫ぶ。
「銃声か!?」
流星が言った。みんな一斉に後ろを振り返る。悲鳴が響き、フェロー達はみんなその場にしゃがんでいた。ガードマンたちが男を盾で押さえつけ、乱射は収まったが、けが人が出ているだろうと思われる。
「助けに行かなきゃ!」
「待て、ダメだ!お前たちは車から出たらダメだ!」
ドアに手をかけた瑠偉を、内海が止めた。そのうち救急車がやってきた。警察車両も。
「どうしますか?出しますか?」
運転手が聞く。内海は、
「うーん、仕方ない、出してください。」
と言った。碧央が、
「そんな……。」
と、つぶやく。
「碧央、仕方ない。俺たちが出て行ったらガードマンを混乱させてしまう。」
流星がそう言って碧央の肩を抱いた。碧央は唇を噛んで頷いた。
翌日はSTEのコンサート後の銃乱射報道で持ち切りだった。日本はもちろん、世界中をこのニュースが駆け巡った。
「ますます風当たりが強くなってしまった。Lost Gunツアーを続けるのは難しいかもしれない。」
内海が言った。
「だから、銃さえ無ければ……。」
涼が悔しがる。
「そうなんだよ、銃さえ無ければこんな事にはならないんだ。アメリカに、もっと銃規制を設けるべきなんだよ。」
碧央が力強く言う。
「何とか、それをもっと訴えられないだろうか。コンサートが出来ないなら、その代わりに。」
大樹もそう言った。内海は、
「そうだな。社長と相談してみるよ。」
と言った。
日本にいる植木と、内海が電話で相談した。なかなか結論は出なかった。コンサートのチケットは完売しているのだ。チケットを買ってくれたフェローたちの為には、どうしたらいいのか。コンサートの続行か、中止か。中止なら代わりにどうするのか。
ツアーの合間に、テレビ出演にも応じた。アメリカの音楽番組にも出たし、日本の音楽番組に中継で参加したし、バラエティー番組の収録もした。アメリカの歌番組に出た時の事。
「STEのみなさん、次はどんな賞を狙いますか?」
MCにそう聞かれ、流星が、
「そうですね。ノーベル平和賞ですかね。」
と答えた。MCは、
「え?音楽の賞ではないんですか?ひょっとしてジョーク?」
と言ったので、流星は答えた。
「はい、ジョークです。ノーベル賞は狙っていません。あははは。でも、僕たちは世界を救うために結成されたグループですから、環境汚染や戦争から地球を守るのが目的です。音楽の賞をいただくのもありがたいのですが、それは手段であって目的ではないのです。」
「手段、というと?」
MCが問う。次は篤が答える。
「僕たちを知ってもらって、僕たちが訴える内容を聞いてもらう為の手段です。」
「だとすると、あなた方がパフォーマンスをするのは、訴えを聞いてもらう為なのですか?」
MCの問いに今度は涼が、
「そうです。」
と答えた。
「歌を聴いてもらう為、ダンスを見てもらう為ではなく?」
次の問いには碧央が、
「それは、あくまでも手段です。」
と言い、
「でも、歌やダンスは好きでしょう?」
今度は光輝が。
「もちろん、好きです。だから、こういう手段を選んだのです。」
「なるほど。」
MCが納得する。最後に瑠偉が、
「全力でパフォーマンスするので、是非見てください!」
と〆た。
コンサートは、銃の持ち込み禁止である。手荷物チェックはさせてもらう。それで、特に問題なくコンサートは行われていった。だが、STEがあるコンサート会場を出ようとした時、事件が起こった。
駐車場から車を出したSTE一行。駐車場の出口には、フェローがたくさん集まっていて、車に向かって手を振っていた。そこへ、ライフルを持った男が近寄ってきて、いきなり銃を乱射したのである。車の中にいても、銃声が聞こえた。
「ちょっと待って!車止めて!」
碧央が叫ぶ。
「銃声か!?」
流星が言った。みんな一斉に後ろを振り返る。悲鳴が響き、フェロー達はみんなその場にしゃがんでいた。ガードマンたちが男を盾で押さえつけ、乱射は収まったが、けが人が出ているだろうと思われる。
「助けに行かなきゃ!」
「待て、ダメだ!お前たちは車から出たらダメだ!」
ドアに手をかけた瑠偉を、内海が止めた。そのうち救急車がやってきた。警察車両も。
「どうしますか?出しますか?」
運転手が聞く。内海は、
「うーん、仕方ない、出してください。」
と言った。碧央が、
「そんな……。」
と、つぶやく。
「碧央、仕方ない。俺たちが出て行ったらガードマンを混乱させてしまう。」
流星がそう言って碧央の肩を抱いた。碧央は唇を噛んで頷いた。
翌日はSTEのコンサート後の銃乱射報道で持ち切りだった。日本はもちろん、世界中をこのニュースが駆け巡った。
「ますます風当たりが強くなってしまった。Lost Gunツアーを続けるのは難しいかもしれない。」
内海が言った。
「だから、銃さえ無ければ……。」
涼が悔しがる。
「そうなんだよ、銃さえ無ければこんな事にはならないんだ。アメリカに、もっと銃規制を設けるべきなんだよ。」
碧央が力強く言う。
「何とか、それをもっと訴えられないだろうか。コンサートが出来ないなら、その代わりに。」
大樹もそう言った。内海は、
「そうだな。社長と相談してみるよ。」
と言った。
日本にいる植木と、内海が電話で相談した。なかなか結論は出なかった。コンサートのチケットは完売しているのだ。チケットを買ってくれたフェローたちの為には、どうしたらいいのか。コンサートの続行か、中止か。中止なら代わりにどうするのか。