新曲のレコーディングが始まった。それぞれ1人で歌うところを録音するので、1人ずつスタジオに入る。瑠偉がスタジオに入ったタイミングを見計らって、STEのメンバーらは、碧央に話をすることにした。
「あー、あのさ、碧央。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
流星がまず声をかけた。
「何?」
碧央がはてな顔で問うと、
「お前さ、その、瑠偉の事、本当のところどう思ってるんだ?」
流星はそう切り出した。
「え!?」
碧央は青くなった、いや、赤くなったか。心臓が飛び出しそうな程驚いた。
「ど、どうって?」
それでも、まだしらを切ろうと試みる。
「正直に言えよ。俺たちは、それでお前のことを軽蔑したり、嫌いになったりなんて、絶対にしないから。」
流星がそう言うと、他のメンバーもコクコクと頷いた。
「みんな……。そうか、分かっちゃってたか。実は、みんなが思っている通りなんだ。」
碧央はそう白状した。
「やっぱりそうか。それで、瑠偉には伝えたのか?その、お前の気持ちを。」
流星が問うと、
「あ、うん。伝えた。」
と、碧央が答える。
「瑠偉は、なんて?」
流星が問うと、
「瑠偉も、同じだって。」
と、碧央が応えた。
「そうか。お互いにな……。いや、それは仕方がない事なんで、俺たちがとやかく言う事じゃないんだけどさ、何となく、このままだとグループの雰囲気も悪くなるしさ。だから、瑠偉ともっと話し合って、また以前のお前たちみたいに戻って欲しいなあと思うんだよ。」
流星が優しく言った。
「みんな、ごめん。そうだよね、気を遣わせちゃったよね。分かった。瑠偉に話しておくよ。」
碧央が言い、この話は終わった。
 その後、碧央は瑠偉と2人になった時に、早速話をした。
「瑠偉、実はさ、流星くんに言われちゃったんだ。俺たちの事、みんなにバレてるって。」
「え?!そうなの?」
「うん。それでさ、グループの雰囲気が悪くなるから、前みたいに戻って欲しいって言われた。」
「バレてたのか。あんまりみんなの前ではくっつかないようにしてたんだけどなあ。態度に出ちゃってたのかなぁ。」
「みんなの前では、もっと気を付けて、仲良くしないようにしような。表情でバレてたのかなぁ。俺、つい嬉しそうな顔してお前の事見てたのかも。」
碧央がそう言うと、瑠偉は破顔した。思いっきり照れている。
「何照れてんだよー。」
碧央が軽く瑠偉の腕を叩く。
「だってー。」
瑠偉が顔を両手で覆った。

 テレビ番組の出演や、別会場でのコンサートがあり、忙しく移動するSTEだったが、数日後に、碧央と瑠偉以外のメンバーは異変を感じ、5人で目配せをして、夜にリビングに集まった。
「ねえ、おかしいよね。あの2人、前にも増して仲が悪くなってるよ。」
光輝が言った。
「話し合った結果、決定的に決裂してしまったのかね。」
大樹も言う。
「最近じゃあ、目も合わせない感じだもんな。」
涼が暗い顔をしていい、
「余計な事しちゃったんじゃないのか?」
篤がほれみたことか、という顔をした。
「うーん、やっぱり2人で話せって突き放したのがいけなかったのかな。俺たちも同席して話し合った方がよかったのかも。」
流星がそう言い、
「何とか、2人がまた仲良くなれるような方法ないかな。」
光輝が言った。
「仲良くなれる方法ねえ。」
涼が首を傾げ、
「放っておいた方がいいんじゃないの?」
やっぱり篤は突き放す。
「もう篤くんってば、らしくないよ。冷たい事言ってー。」
篤は光輝にそう言われて、口をつぐんだ。元々、瑠偉は碧央ととても仲が良かった。また、仲良くさせたいわけではないのだ、篤にとっては。2人がわだかまりを抱えたままなのは、良くないとは思っているけれど。
「くっつかないなら、くっつけちゃおうか。」
いきなり光輝が笑顔になって言った。
「ん?何を言い出すんだ?」
流星が疑問を投げる。
「やっぱりさ、仲よくなるにはスキンシップじゃない?ここんとこ、あの2人はスキンシップが足りないと思うんだよね。」
光輝が嬉々として言う。
「まあ、確かにそうだよな。前みたいに肩を抱いたり、ハグしたりすれば、気持ちも近寄ってくるってわけか。」
涼が納得顔で言った。
「うんうん。」
光輝はニコニコである。
「確かに、気持ちが離れてしまった時は、体の方から接触すればいい、というのも一理あるな。」
大樹までもがそう言うので、
「マジか……。」
篤は天を仰いだ。
「それで、どんな方法でくっつけるんだ?」
流星が更に言うので、
「流星まで……。」
篤は観念した。仕方ない、俺の可愛い瑠偉を、碧央にちょっとばかりハグさせてやるか、とは言えないが、そういう想いを持って、
「分かったよ……。作戦を立てようぜ。」
と、渋い顔で言った。何とか全員一致で可決。5人はそれからしばらくひそひそと相談した。