碧央が退院した。それでも、松葉杖の生活だ。STEのメンバーは、次のコンサートの準備に入っていた。
 コンサートの為に、新しい曲もいくつか作り、その振り付けもし、練習もしなくてはならない。碧央は歌の練習には参加するが、振り付けの練習は見学だけ。もちろん、体が回復したらその振りを覚えなければならないので、真剣に見学をする。口出しもする。
 そして、練習などが終わると、それぞれの部屋に帰る。そんな時、慣れない松葉杖をついて移動する碧央は、人一倍時間がかかる。すると、必ず瑠偉が一緒に付いて部屋まで送るのだった。
 ある日、碧央が先に部屋に戻ると言って、瑠偉が送って行った後、リビングには、残りの5人のメンバーが残っていた。
「やっぱり、瑠偉は碧央に負い目を感じているのかな。」
涼がおもむろに口を開いた。
「ああ。あれだけ世話を焼いているのに、あまり2人で会話をしていない気がする。」
と、大樹も賛同する。
「ということは、仲が悪くなっちゃったのかな?」
光輝が言い、流星は、
「碧央は、瑠偉が1人で逃げた事なんて、気にしてないと思うんだけどな。」
と言った。
「瑠偉が勝手に負い目を感じているだけだとは思うけど、碧央もどうもなぁ。何かあったのかなあ。」
と、篤も首を傾げながら言った。
「ここは、俺たちが一肌脱ぐべきなんじゃない?」
と、涼が言った。
「というと?」
光輝が先を促す。
「あの時の話を聞き出すとか?」
涼がそう答えると、大樹が、
「でもなあ。慎重にやった方がいいと思うぞ。心の傷に触れる事になるかもしれない。みんなの前では話したくないかもしれないし。」
と、慎重さをにじませた。結局、どうすればいいのか、結論は出なかった。

 一方、碧央の部屋へ行った2人。ドアの開け閉めを手伝った瑠偉は、松葉杖を預かって立てかけた。碧央がベッドに腰かけると、
「じゃ、お休み。」
瑠偉はそう言って、碧央に背中を向ける。
「おい、まだ帰るなよ。」
碧央が慌てて瑠偉の腕を掴む。瑠偉は振り返って、笑った。
「冗談だよ。まだ帰らないよ。」
「こいつは~。」
碧央はぐっと手を引き、瑠偉を隣に座らせた。勢いあまって2人して倒れる。
「わー、あははは。」
2人で笑い合う。非常に楽しそうである。リビングで他のメンバーたちが心配している事など、全く知らない2人。実に幸せな時間を過ごしているのであった。