「俺、1つだけやり残したことがある。このままじゃ、後悔する。死にきれない。」
碧央はそう言って、瑠偉の方へと向き直った。
「俺、お前の事が……好きなんだ。」
「え?それ、どういう……?」
瑠偉は慎重に、聞き返した。
「友情とか、そういうんじゃない。マジで、惚れてるんだ、お前に。」
碧央がそう言うと、
「え……。うそっ。うそー!」
瑠偉は後ろにひっくり返った。
「驚きすぎだろ。俺、けっこう分かり安く態度に出してただろ?他のメンバーよりもボディタッチ多めだったし、ふざけてほっぺにチューした事だってあるし。」
碧央が少し照れた顔でそう言うと、瑠偉は、
「そ、それは、フェローサービスだと思ってたよ。だって、ステージの上とか、カメラが回っている時だけだったじゃん。それ以外の時は、全然そういう事しないから。」
と言った。
ここで説明しておこう。男性アイドルグループのファン心理の1つに、「どっかの女に取られるくらいなら、メンバー同士でくっついて欲しい」というのがある。特に、顔の美しいメンバー同士が仲良くしているのを見るのは、とても嬉しいものなのである。よって、碧央と瑠偉が密着すると、大きな歓声が上がる。彼らがファンサービスとして、イチャイチャするのはごく自然な事なのである。
「それはまあ、フェローサービスにかこつけてたっていうか。」
碧央が言うと瑠偉は、
「分かりにくいよ!」
と即座に突っ込んだ。そこで、碧央が黙って瑠偉を見た。瑠偉は、一つ息を吸ってから話し始めた。
「昔……高校生の時、碧央くんがうちに来るかって言ってくれたでしょ。あの時に思ったんだ。俺、この人の為なら死ねるって。今でもそう。だから、好きなんてレベルじゃない。これはもう、愛だよ。俺は、碧央くんを愛してるよ。」
「大げさだなぁ。だいたい、うちに来るかって言ったのは、下心があったからだし。」
碧央はそう言いながら、瑠偉に顔を近づけていった。瑠偉は全く動かない。
「瑠偉、キスしていい?」
碧央が言うと、
「碧央くんが望むなら、どうぞ。」
瑠偉が穏やかにそう言った。だが、碧央は動きを止めた。そして、離れた。
「なーんだ、俺、振られたのか。俺が望むならって……。そりゃあ、俺の為に死ねるくらいなんだから、キスくらい出来るだろうけどさ……。」
碧央は、最後はごにょごにょと濁しながらそう言った。すると、瑠偉は碧央の首をガシッと掴んだ。碧央が振り向くと、瑠偉は顔を近づけ、唇を重ねた。
今まで、寸止めなら何十回、いや、もしかしたら何百回とやってきた。ファンサービスにかこつけて。だが、本当に唇を重ねたのは、これが初めてだった。
「瑠偉……。」
「碧央くんを振る人なんて、この世界にいるの?」
「俺を振ることができるのは、お前だけだ。」
「愛してるって言ったでしょ。」
そうして、もう一度キスをした。
「よし!俄然やる気出た。こうなったら、絶対に死ねないな。」
キスの後、瑠偉は元気にそう言った。
「あれ、俺の為に死ねるとか言ってなかったか?」
碧央が笑って言うと、
「碧央くんの為なら死ねるよ。」
と、瑠偉が言う。
「お前に死なれたら俺が困るんだよ。たとえ俺が死んでも、お前は生きろ。」
碧央がそう言うと、
「俺、永遠に片想いだと思っていたから、どっかに自滅願望があったんだと思う。でも、両想いだと分かったからには、死ぬわけには行かないぜ。メンバー全員、生きてこの島から出る!そうと決まったら、サクサクッと火文字作ろう!」
と、瑠偉が言った。瑠偉は、いつも少し達観したところがあって、年下のくせにやけに大人びて見える時があったが、今はすっかりはしゃいで、まるで子供のようだ。碧央は微笑んだ。
「よし!作ろう!」
2人はSTEの文字を作っていた場所に戻り、作業を続けた。
「これさ、たぶん火を起こして、次々に移していくのが大変だよね。何か燃えやすい物を加えたら早いと思うんだけど。」
そう言って、ズボンのポケットに手を入れた瑠偉は、指先に触れた物にハッとした。
「これだ!マイク!」
イヤホンとヘッドマイクがポケットに入っていた。上着は既に脱ぎ捨てていたので、ズボンのポケットに入っていて良かった。
「マイク?」
碧央が聞き返す。
「そう。この中身をそれぞれに入れれば、きっと良く燃えるでしょ。」
瑠偉はそう言うと、石を探し、ヘッドマイクを叩いて壊した。暗いので、何がどれだかよく分からないが、適当に部品をそれぞれの組まれた木の上に落とした。
「いたぞ!」
そこへ、軍人と思われる声が聞こえた。
「やばい!瑠偉、逃げるぞ!」
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
碧央と瑠偉は、手を繋いで走り出した。
―パンパン!
「あ!碧央くん!」
手が離れ、碧央が倒れた。勢いで数歩先まで走って行った瑠偉は、戻って来た。
「うわっ……ぐっ……足を撃たれたみたいだ。瑠偉、お前は行け!」
碧央が足を抱えながら言葉を絞り出す。
「嫌だよ!」
そう言って、瑠偉は碧央を起こそうとした。
「2人とも捕まっちまうよ。そうしたら、あそこに戻されて終わりだ。お前は逃げて、助けを呼べ!火を起こせ!早く!」
碧央に手を払われて、瑠偉は一瞬迷ったが、
「分かった。絶対に火文字、成功させるから!」
瑠偉は走り出した。
「大丈夫、みんなもいるし、あいつらだって俺たちのパフォーマンスを見て喜んでたし、碧央くんを死なせたりはしない。大丈夫だ、大丈夫。」
瑠偉は自分に何度もそう言い聞かせ、走り続けた。
碧央はそう言って、瑠偉の方へと向き直った。
「俺、お前の事が……好きなんだ。」
「え?それ、どういう……?」
瑠偉は慎重に、聞き返した。
「友情とか、そういうんじゃない。マジで、惚れてるんだ、お前に。」
碧央がそう言うと、
「え……。うそっ。うそー!」
瑠偉は後ろにひっくり返った。
「驚きすぎだろ。俺、けっこう分かり安く態度に出してただろ?他のメンバーよりもボディタッチ多めだったし、ふざけてほっぺにチューした事だってあるし。」
碧央が少し照れた顔でそう言うと、瑠偉は、
「そ、それは、フェローサービスだと思ってたよ。だって、ステージの上とか、カメラが回っている時だけだったじゃん。それ以外の時は、全然そういう事しないから。」
と言った。
ここで説明しておこう。男性アイドルグループのファン心理の1つに、「どっかの女に取られるくらいなら、メンバー同士でくっついて欲しい」というのがある。特に、顔の美しいメンバー同士が仲良くしているのを見るのは、とても嬉しいものなのである。よって、碧央と瑠偉が密着すると、大きな歓声が上がる。彼らがファンサービスとして、イチャイチャするのはごく自然な事なのである。
「それはまあ、フェローサービスにかこつけてたっていうか。」
碧央が言うと瑠偉は、
「分かりにくいよ!」
と即座に突っ込んだ。そこで、碧央が黙って瑠偉を見た。瑠偉は、一つ息を吸ってから話し始めた。
「昔……高校生の時、碧央くんがうちに来るかって言ってくれたでしょ。あの時に思ったんだ。俺、この人の為なら死ねるって。今でもそう。だから、好きなんてレベルじゃない。これはもう、愛だよ。俺は、碧央くんを愛してるよ。」
「大げさだなぁ。だいたい、うちに来るかって言ったのは、下心があったからだし。」
碧央はそう言いながら、瑠偉に顔を近づけていった。瑠偉は全く動かない。
「瑠偉、キスしていい?」
碧央が言うと、
「碧央くんが望むなら、どうぞ。」
瑠偉が穏やかにそう言った。だが、碧央は動きを止めた。そして、離れた。
「なーんだ、俺、振られたのか。俺が望むならって……。そりゃあ、俺の為に死ねるくらいなんだから、キスくらい出来るだろうけどさ……。」
碧央は、最後はごにょごにょと濁しながらそう言った。すると、瑠偉は碧央の首をガシッと掴んだ。碧央が振り向くと、瑠偉は顔を近づけ、唇を重ねた。
今まで、寸止めなら何十回、いや、もしかしたら何百回とやってきた。ファンサービスにかこつけて。だが、本当に唇を重ねたのは、これが初めてだった。
「瑠偉……。」
「碧央くんを振る人なんて、この世界にいるの?」
「俺を振ることができるのは、お前だけだ。」
「愛してるって言ったでしょ。」
そうして、もう一度キスをした。
「よし!俄然やる気出た。こうなったら、絶対に死ねないな。」
キスの後、瑠偉は元気にそう言った。
「あれ、俺の為に死ねるとか言ってなかったか?」
碧央が笑って言うと、
「碧央くんの為なら死ねるよ。」
と、瑠偉が言う。
「お前に死なれたら俺が困るんだよ。たとえ俺が死んでも、お前は生きろ。」
碧央がそう言うと、
「俺、永遠に片想いだと思っていたから、どっかに自滅願望があったんだと思う。でも、両想いだと分かったからには、死ぬわけには行かないぜ。メンバー全員、生きてこの島から出る!そうと決まったら、サクサクッと火文字作ろう!」
と、瑠偉が言った。瑠偉は、いつも少し達観したところがあって、年下のくせにやけに大人びて見える時があったが、今はすっかりはしゃいで、まるで子供のようだ。碧央は微笑んだ。
「よし!作ろう!」
2人はSTEの文字を作っていた場所に戻り、作業を続けた。
「これさ、たぶん火を起こして、次々に移していくのが大変だよね。何か燃えやすい物を加えたら早いと思うんだけど。」
そう言って、ズボンのポケットに手を入れた瑠偉は、指先に触れた物にハッとした。
「これだ!マイク!」
イヤホンとヘッドマイクがポケットに入っていた。上着は既に脱ぎ捨てていたので、ズボンのポケットに入っていて良かった。
「マイク?」
碧央が聞き返す。
「そう。この中身をそれぞれに入れれば、きっと良く燃えるでしょ。」
瑠偉はそう言うと、石を探し、ヘッドマイクを叩いて壊した。暗いので、何がどれだかよく分からないが、適当に部品をそれぞれの組まれた木の上に落とした。
「いたぞ!」
そこへ、軍人と思われる声が聞こえた。
「やばい!瑠偉、逃げるぞ!」
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
碧央と瑠偉は、手を繋いで走り出した。
―パンパン!
「あ!碧央くん!」
手が離れ、碧央が倒れた。勢いで数歩先まで走って行った瑠偉は、戻って来た。
「うわっ……ぐっ……足を撃たれたみたいだ。瑠偉、お前は行け!」
碧央が足を抱えながら言葉を絞り出す。
「嫌だよ!」
そう言って、瑠偉は碧央を起こそうとした。
「2人とも捕まっちまうよ。そうしたら、あそこに戻されて終わりだ。お前は逃げて、助けを呼べ!火を起こせ!早く!」
碧央に手を払われて、瑠偉は一瞬迷ったが、
「分かった。絶対に火文字、成功させるから!」
瑠偉は走り出した。
「大丈夫、みんなもいるし、あいつらだって俺たちのパフォーマンスを見て喜んでたし、碧央くんを死なせたりはしない。大丈夫だ、大丈夫。」
瑠偉は自分に何度もそう言い聞かせ、走り続けた。