とうとう、STEの楽曲がアメリカのビルボードチャートで1位に輝くと、日本でもにわかに騒がれるようになった。各種マスコミに取り上げられ、テレビ出演のオファーや企業からのCM出演の依頼が殺到した。みな、競合他社に先を越されぬよう、必死なのだ。だが、STEは普通のアイドルではないのである。
「CMのオファーがたくさん来ているが、一般の商品の依頼は全て断ろうと思う。」
植木が言った。
「え?どうしてですか?やっとお金が稼げるようになるのに?」
篤が言うと、植木は、
「うん。お金を稼ぐのが目的じゃないだろ。いや、君たちにやっと給料を払えるようになって、本来ならもっとたくさん支払うべきなのかもしれない。だが、我々の目的はなんだった?」
と、逆に聞いた。
「そりゃあ、地球を守ることですよ。なあ?」
篤はそう言って、メンバーを見渡した。
「そう。君たちが訴えて来た「ゴミ問題」は、過剰消費によるところが大きい。今や人気者となった君たちが宣伝すれば、フェローたちはこぞって買うだろう。必要でなくとも買うだろう。それは、環境問題からしたら、良くない事だ。」
植木はそう言った。
「なるほど。だから、一般商品のCMには出ない。逆に、環境問題を訴えるようなコマーシャルには出ると。」
流星が手を打つ勢いで言った。
「そうだ。ボランティア活動をする団体や、献血を呼びかけたりするような宣伝は積極的にしたい。ただ、そういう所はお金をたくさん出せないので、アイドルを使おうとは思わないようだ。オファーが全然来ない。」
と、植木が言った。すると瑠偉が、
「社長、他社の宣伝なんかしないで、俺たちのロゴ入り製品を作って、それを宣伝したらどうですか?エコバックとか、マイ箸とか、金属ストローとか。」
と言った。涼がそれを聞いて、
「瑠偉、いい事言うねえ。そういうの、買ってもらって使ってもらえばねえ。」
と言った。植木もこう言った。
「そうだな、STEのロゴ入り製品か。やってみよう。」
そうして、ロゴ入り製品を売り出し、また、クリーンエネルギーの呼びかけ、太陽光発電の宣伝を、ボランティアでやることにした。テレビで流してもらうが、CM料はもらわないという具合に。
 国内でのコンサートも行うようになった。人気は急上昇し、それに伴って、太陽光発電を取り入れる家が飛躍的に増え、プラゴミが大幅に削減されていった。つまりは、STEの影響力が次第に大きくなっていったのである。