そうして、STEは一歩ずつアイドルの道を歩んで行った。ライブをやらせてもらえるようになり、まだまだ無名ながらも、全国を回った。そして、行く先々でボランティア活動にも参加した。平日は学校とレッスン場に通い、金曜日の夜に地方へ移動し、土曜日にライブをやり、日曜日にボランティア活動をするという生活を続けた。学生なのでテストもあるし、学校行事もある。だが、曲を作り、ダンスの練習をし、移動距離も多い。若い男子と言えども、疲労がたまってくる。
「瑠偉、お前、足怪我してるだろ。」
光輝が瑠偉に向かって突然そう言った。
「え?うううん、してないよ。」
瑠偉は慌てて否定した。
「嘘だね。べつに休めとか言わないから、正直に言ってごらん。」
光輝がそう言うと瑠偉は、
「……実は、昨日の練習で足首ひねっちゃって。」
と、正直に打ち明けた。
「だろ?そういう時は、テーピングだよ。」
光輝はそう言って、自分のバッグからテープを取り出した。
「いつも持ち歩いてるの?」
「そうだよ。アスリートの基本だよ。」
「ははは、俺たちってアスリートなんだ?」
瑠偉は、自分の呼び方を”僕”から”俺”に替えていた。いつの間にか。小さかったのに、すっかり大きくなって、光輝よりも背が高くなっていた。
「ほら、こうやって固定して。ね?これなら痛くないでしょ?レッスンが終わったら、すぐに冷やすんだよ。そして、ダンスする時以外はなるべく休む。」
光輝がそう言うと、
「はい。光輝くん、ありがとう。」
と、瑠偉が素直に言った。
「よしよし。」
光輝は、自分より大きくなってしまった瑠偉の頭をナデナデした。
「あー、俺も足が痛いなー。」
それを少し離れたところで見ていた篤が、突然大きな声を出した。
「え?篤くんも?あー、嘘でしょう。」
光輝は騙されないぞ、とばかりに笑って言った。
「だって、瑠偉には優しいじゃん。」
篤が言うと、
「何言ってんだよ。僕は誰にでも優しいんだよ。」
と言って、光輝がウインクした。一同爆笑。