しかし、状況が一変する出来事が突然起こった。
 小惑星の衝突だ。
 6600万年前、直径10キロの小惑星が地球に激突したのだ。
 場所はメキシコのユカタン半島だった。
 そのエネルギーは広島に落ちた原爆の10億倍だった。
 一瞬にして気候が変動し、地球に厳冬の時代がやって来た。
 衝突して巻き上がった粉塵(ふんじん)が空を覆い、太陽光を遮ったのだ。
 それによって、光合成ができなくなった植物は枯れていった。
 植物を餌にしていた動物も死んでいった。
 餌になる草食動物がいなくなった地上で肉食恐竜が生き延びる術はなかった。
 恐竜は絶滅した。
 
 しかし、そのことによって、わたしたち祖先に大きな変化が訪れた。
 千載一遇のチャンスが巡ってきたのだ。
 それまで恐竜が独占していた空間や食物を我が物とすることができるようになったのだ。
 更に、日中に活動することもできるようになった。
 その結果、急速に多様化した哺乳類が陸の王者へと上り詰めていった。
 その中で、わたしたちの祖先は霊長類(れいちょうるい)に進化した。6000万年前のことだ。
 それが、3000万年前に真猿類(しんえんるい)に進化し、類人猿(るいじんえん)を経て、700万年前に人類になった。
 そして、250万年前にヒト属となり、25万年前にヒトになった。