場面が陸に変わった。
 24億年前、海の中で飽和状態になった酸素は海面から空気中へと放出され始めた。
 そして、呼吸に必要な酸素が徐々に増えていった。
 すると、それが上空に溜まって〈オゾン層〉となり、太陽からの紫外線をブロックするようになった。
 生物が生きていくための住みやすい環境が整ったのだ。
 生物はこのチャンスを逃さなかった。
 海を出て上陸を始めたのだ。
 先ず、植物が4億5千万年前に、それを追うようにして昆虫が、そして、魚のヒレが足に進化した両生類が3億9千万年前に上陸を始めた。それは、わたしたちの祖先が肺呼吸を始めた瞬間だった。
 
 その後、爬虫類(はちゅうるい)に似た〈単弓類(たんきゅうるい)〉を経て、〈哺乳類(ほにゅうるい)〉になったのが2億年前だった。わたしたちの祖先は〈胎生(たいせい)〉を獲得したのだ。〈有胎盤類(ゆうたいばんるい)〉としてお腹の中で胎児を育てる能力を持ったのだ。
 しかし、その時代に生きていくのは大変だった。
 恐ろしい〈肉食恐竜〉がいたからだ。
 ティラノサウルスに見つからないように葉陰や小穴で怯えながらやり過ごすしかなかった。
 ネズミのような外見をしたわたしたちの祖先は体長が10センチほどしかなかったから、肉食恐竜に見つかったらひとたまりもなかった。だから、彼らが寝静まる夜間にこそこそと活動するしかなかった。