そうこうするうちに壇上に三人の女性が現れ、用意された椅子に腰かけた。
 先輩ママの座談会が始まるのだ。
 司会者が「1年ほど前に出産を経験された方ばかりです」と告げたあと、一人一人が紹介された。
 年齢はそれぞれ、28歳、34歳、41歳ということだった。
 幅広い年代の出席者に対応しようとする主催者側の配慮が感じられた。
 
 高齢出産で帝王切開を経験した41歳のママがその時のことを話し始めた。
 麻酔がかかっていたので出産自体は痛くなかったが、麻酔が切れたあとの痛みは半端なかったと身振り手振りで説明した。
 同年代と思われる参加者たちが首と目を突き出して聞き入っていた。
 
 34歳のママは陣痛と破水についての体験を披露した。
 病院に向かう車の中で破水し、羊水が大量に流れ出て大変だったし、とても不安だったことを顔をしかめて臨場感たっぷりに話した。
 その光景を思い浮かべた参加者は同じように顔をしかめていた。
 
 28歳のママは母乳の出が悪くてすごく苦労したことを胸に手を当てて話した。
 その上で、自分でできる授乳のためのエクササイズや乳頭マッサージ、更には、母乳相談室のことを教えてくれた。
 
 対談の最後に三人が異口同音に話していたのが、「一人で悩まない」ということだった。
 医師や助産師などの専門家に早めに相談することが大事だ、と口を揃えていたのが印象的だった。
 
「あなたには産婦人科医のご主人がいるからいいわね」

 優梨恵が羨ましそうに呟いた。
 そうでもないのよと小さく手を振ったが、今日の話を聞いて、改めて新の存在に意を強くした考子だった。