「戌の日か~」

「知ってた?」

「もちろん、知ってるよ」

「へ~、そうなんだ。私全然知らなかった」

 帰宅した新が戌の日のことを詳しく教えてくれた。

 妊娠5か月目にする安産祈願のことで、12日おきに巡ってくること、その日に腹帯を巻いて神社で安産を祈願すること、祈祷(きとう)をしてもらうためには初穂料(はつほりょう)が必要で相場は5千円から1万円くらいだということ、お守り一式がセットになったものが別途売っていること、服装は特に決まりはなく、カジュアルなものでいいこと等々、すべて考子が初めて聞くことばかりだった。
 
「行った方がいい?」

「そうだね、せっかくお義母さんが心配して電話してくれたんだから、行ってみようよ」

「あなたがそう言うなら」

 まだはっきりと呑み込めていない考子は、頬杖をついて神社のある方角に目を向けた。