「何これ! ど、どうなってこう言う事になってんの!」

 でもさっき九字を切った事により発動した術が効いているのが、あやかしも人間の兵士も私の方に見向きはしてこない。今の私はステルス状態だ。

「……ここから出よう」
 
 牛車から降りた私ははだしのまま人やあやかし達を縫うようにして移動する。ステルス状態ではあるけど、弓矢の流れ弾がこっちに飛んで来たりしないか不安でならない。
 
「……ど、どうしよ」

 船の先端まで来たのはいいけど……援軍らしき船も、関係ない漁船もあやかし達の船も見えない。つまりは……四面楚歌。

「えっここで私……死ぬの?」

 そうつぶやいた瞬間、誰かが船が沈みかけているぞ! と声を発した。

「わっ!」

 ぐらりと船が右へと大きく傾く。どうやらあやかしが船体に大きな傷を開けたみたい。傷からは海水がどぼどぼと堰を切ったかのように流れこんできている。
 ていうか転生していきなり島流しにされて、その途中で死ぬのか、私……。転生人生さよなら……。また次も人間に転生できますように。

「おい! 援軍が来たぞ!」

 声がした方へと振り返ると、大船団が全速力で向かってきていた。立派な船の周囲には鳥っぽい何かが船を守るように飛んでいる。