「安心しろ。どうせいつかはこうなるんだ。だったら徹底的にやった方が良い」
「珠丸……」
「俺、死なないから」

 彼の笑みがあたたかいお湯になって、心の奥までしみ込んでいくような気がした。

◇ ◇ ◇

 あやはが脱走&私の屋敷に匿っているのが実亨親王にバレ、屋敷に来た彼へ珠丸が決闘を申し込んだ次の日の朝。私達は約束通りあやはが捕縛されていた寺の境内に来ていた。珠丸と一緒に都へ来ていた他のあやかし達は、船長によって海へと戻っていったみたい。
 内裏で決闘するのは血の穢れが云々という事で、寺の境内の隣にある広場になったのである。ちなみに私達女性陣はこれから広場に徒歩で向かう予定だ。

「……珠丸」

 彼は実亨親王同様、広場にいるはず。正直気が気じゃないけど、ここまで来たら珠丸を信じるしかない。なお、珠丸が負けた場合私は実亨親王へ嫁がなければならない事になっている。嫌だ……絶対嫌だ……。
 広場へ到着すると、既に大鎧を着用して武装した実亨親王と、鎧を着ているとはいえ実亨親王より軽装な珠丸が武器を持って向かい合っていた。

「それでは、はじめ!」

 私達が来たのを見計らうようにして、決闘が始まる。