「ほらほら、怖くないよ~」

 猫なで声を出して猫をおびき寄せてみる。でも猫は微動だにしない。すると境内から若い僧侶が現れてうちの猫がすみませんと言いながら猫2頭を両脇に抱え上げて建物の中へと消えていった。
 どうやら脱走していたみたい。

「飼い猫ですか。かわいいですね」
「一の姫様。猫は私のご友人である大納言の二の姫様も買っておられますわね。私は苦手ですので……」
「それなら仕方ないですよね。では境内にお邪魔しましょう」

 境内に入ったら右奥の方に何やら人だかりができている。武装した兵士や僧侶が10人くらいはいるだろうか。

「何かあったのでしょうか?」

 取り巻きAも気が付いたのか、彼らを不審な目で見つめている。

「近づいてみましょう」

 現場へ近づいてみると、どうやら建物全体が誰かの警護対象になっているみたい。気になったので近くにいた僧侶に話を聞いてみるけど、こちらからは何も教えられない。とだけしか答えてくれなかった。
 うん、絶対あやしい。

「一の姫様?」
「ちょっと覗いてみてみます」
「わ、私も参ります……!」

 えっと……建物の奥にある通路からなら入れそうかな? 兵士達がたくさんいるから怖いけど行ってみよう……!