「それは無理だ。明子ひとりで都へと帰ってもらう。それに貴様……明子と親しいようだが一体どのような間柄か?」

 実亨親王からは殺気めいたオーラが思いっきり駄々洩れしていた。え、もしかして嫉妬? それだとしたら怖いんだけど!

「俺は……」
「私は珠丸をお慕いしています!」

 気が付けば私は文字通り珠丸に告白していた。勿論、彼に告白したいとか、彼をかばいたいとかそう思ったが故の行動ではない。本当に無意識のものだ。
 珠丸も実亨親王も目をまん丸にさせながら驚いている。

「珠丸は私の命の恩人でもあります。ですから彼も都に連れて行ってほしいんです!」
「それは無理な話だ。第一俺はそなたしか連れて行きたくない」

 ほら! やっぱり嫉妬しちゃってるじゃん! 

「なら私は一生ここにおります! 都暮らしなど結構でございます! どうぞ引き返してください!」
「ぐっ……そなたは前はそんな態度をするような姫君ではなかった。一体何があったのだ……」

 とはいえ、私が立野明子に転生していて、魂? は明子とは別人だなんて言える訳がない。言ったとしても信じてくれないだろう。

「明子……」

 すると、珠丸は私の右手をそっと握った。