船の姿は徐々に大きくなっていき、更に数が増えていく。一体何なのか。全く分からない。

「こっちに来ているじゃねえか! 一体何なんだ?! 俺は違法なものなんざ売ってねえぞ?!」

 そして大船団が市場船のすぐ近くまでやって来ると、そこで停泊する。船の上には武装した兵士に僧侶の姿が見えた。
 どういう事なのかさっぱり理解できないでいる私達の元へ、がしゃがしゃと音を立てながら兵士達がこちらへと板をかけてきた。

「おい! うちの船に何か用か?!」

 船長の言葉が周囲一帯に響き渡る。すると船から顔を知っている人物が鎧を身に纏った状態で現れた。

「そこにいる左大臣の一の姫様を迎えに参った!」

 実亨親王?! いや、待って。私を迎えに来たってどういう事?!

「と、東宮様?!」

 船長が動揺している間にも、実亨親王は橋代わりになっている板を踏み歩いてこちらへと渡って来る。

「さあ、明子。待たせたな。共に都へと帰ろう」
「え……」

 私の前へと跪いて、右手を差し出す実亨親王の姿はまるでおとぎ話に出て来る王子様のそれと同じだ。だけどその手を取る気にはなれないので、ちらりと横にいた珠丸を見る。