「左大臣様の一の姫様の事ではないかと」
「明子の事か」
「さようでございます」

 ずばりと言い当てられた実亨親王は、心の中で参ったな……。と呟いた。だが、明子の事を考えているというのをあやはには知られたくない実亨親王は、ふっと笑いながらも違うな。と答える。

「そうでございましたか。とんだご無礼をお許し仕りませ」
「あやは、謝らなくても良い。占いだってそうだ。たまには外れる事もある」

 外れる事もある。と語りながら脳内では島流しを言い渡した時の明子の姿を思い浮かべている実亨親王。じっと彼を見ていたあやははきょろきょろと周りに目を通した後に、失礼します。と小さな声で言い残して退出していった。

「ふう……」

 広間には実亨親王だけとなる。彼はその場から立ち上がって中庭へと赴くと、ぼおっと遠くを見つめ始めた。

「……なんなんだ。この気持ちは。俺はやはりおかしい。おかしくなっている」