「辛気臭い話はやめだやめ! さっさと飯食って貝合わせしようぜ!」

 くるっといつも通りのからっとした珠丸の雰囲気に戻った。ちょっと安心したのと同時に、言葉をかけてやれなかった罪悪感が目立つ。
 でも彼がせっかくこういう空気に変えてくれたのだから、空気をぶち壊す訳にもいかないので、作り笑いを浮かべながらおかゆを完食したのだった。

「ごちそうさまでした! 美味しかったです!」
「よかった! 口に合って何よりだ」

 お皿を洗った後、屋敷中央にある広間にて貝合わせを始めた。最初はルールを珠丸から教えてもらって、それから実践してみたのだけど、なるほど。これは思ったよりも楽しいゲームだ。

「おいおい。アンタ飲み込むの早いな?!」

 珠丸に勝てるくらいに急成長? した私。珠丸にも負けず嫌いの炎が宿ったのか、気が付けば昼過ぎまで貝合わせに興じていたのだった。
 お昼ご飯をさっとかきこんだ後は、また食材探しに向かう。
 
「ふう……」

 夜中。自室で眠っていると目が覚めたので天井を見上げる。本当にこの後迎えとか来たりするのかな? いや、そんな事はないはずだ。私は実亨親王から島流しに処された身。ここから無罪放免だなんて良い話がある訳ない。
 それに……珠丸と離れ離れになるのは嫌だ。

「私、珠丸の事が好きだ」

 と、小さく念仏のように呟くとまた目を閉じたのだった。