「はあっ……」

 唇同士が離れて最初の呼吸は、水中から水面へと上がった時のそれとよく似ていた。苦しさがあるか無いかという違いはあるけど。

「はあっはあっ」
「大丈夫か?」
「いえ、私は大丈夫です……こういうの初めてなもので」

 ディープキスってこんな感じなんだな……。思ったよりも心地よくて気持ちが良い。そして安心できる。

「もう1回してみるか?」

 私は首を縦に振ると目をつむった。再度唇が重なる。ついばむように何度も触れては離れてを繰り返してから、ぐっと飲み込むように深く唇が重なり合った。
 そして彼の腕が私の背中に回された。より一層、彼との距離が近くなる。

「んっ……」

 こんなに情熱的にキスを交わすなんて考えもしなかったけど、自然に受け入れられている。やっぱりこういうロマンティックな時は誰だってこうなってしまうのだろうか?
 分からないけど、今はこのまま時間が止まってくれたらいいのに。なんて思ってしまう。

「んむっ……はあっ……」

 私達は何度も互いを求めるように口づけを交わし合う。
 そして珠丸の声掛けにより、温泉から出て着替えた後は、屋敷に戻ったのだった。