「っし、流すぞ。目を閉じな」
「はい」

 ばしゃっと勢いよく髪にお湯がかかる。それを何度か繰り返すと、長い髪をくるくると束ね、手拭いで髪を覆ってくれた。

「ありがとうございます。すっきりしました」
「どういたしまして。後であやかしに髪を乾かしてもらいなよ」

 2人で再度温泉に浸かる。やっぱり温泉は温かくてぽかぽかする。

「おっ、あれ見てごらんよ。すんげえ良い眺めだぞ」

 珠丸が指さした先に目を向けると、宝石箱をひっくり返したかのような星空が浮かんでいた。この世界では星空がこんなに綺麗に見られるんだな……。

「綺麗だろ、星空。砂浜もいいが、ここからは特にいい感じに見られるんだ」
「遮るものが何にもないですね。こんなに綺麗に見られるんだ……」

 前世では、こんな綺麗でたくさんの星々を見た事はない。一応プラネタリウムで見た事はあるけど、リアルではぽつぽつとした星の並びを見るのが精いっぱいだった。

「明子はこんな夜空見た事ないのか?」

 立野明子というキャラクターはこんな綺麗な夜空を見た事があるかどうかはわからない。が、私自身はないので、はい。と答えた。