羞恥心と戦いながら手早く服を脱いで、手ぬぐいで胴体を覆う。

「お、終わりました……」
「ほいほい」

 2人で掛け湯をしてから温泉に入る。温泉の湯加減はちょうど良くて、気持ちが良い。
 私の右隣で足を伸ばして座っている珠丸は、私の髪を興味深そうに触れている。

「髪、どうやって洗うんだ?」
「髪は……何か泡立てられるものとかあるんですか?」
「じゃあ、俺が術使ってみる。ここの椅子に座ってくれ」

 銭湯にありそうな小さな木製の椅子に座る。すると珠丸が木桶に入れた温泉の湯が、ばさっと何度も上からかかってきた。
 
「これくらい濡れたら大丈夫か」

 彼が両手で私の髪を挟むと、そこから石鹸で泡立てたような泡が湧いてきた。

「もこもこですね」
「だろ? 綺麗に洗ってやる」

 珠丸に髪を洗ってもらえるなんて……。嬉しいしドキドキが止まらない。

「へへっ、姫様の髪を洗える日が来るなんてな」
「嬉しいですか?」
「勿論だよ。明子は?」
「嬉しい、です……」

 それ以上はなんだか照れくさくなって言えなかった。それにしても彼の手つきからは慣れを感じる。
 もしかしたら海坊主の仲間の髪も洗ってやったりしているのだろうか。彼が仲間の髪を洗ってやっている姿を妄想すると、ちょっとほほえましい気持ちになった。