「明子。風呂は入るか? ああ、えっと……姫様とか偉い人は占いでそういうの決めるんだっけか」
「風呂ですか。ああ……」

 確かこの世界というか……平安時代のお姫様は毎日お風呂には入らないんだよね。しかも蒸し風呂だったとか。
 でも潮風を浴びたりしたせいか、身体中ベタベタになっている気がする。

「この島には温泉が湧いているんだ」
「温泉?」
「うん。入るとさっぱりするし、怪我がすぐに治る」

 じゃあ、入ろうかな……。

「入ってみます」
「わかった。替えの服を用意して、はやく行こう」

 手早く準備を済ませると、珠丸に手を引かれながら温泉に向かう。
 温泉は屋敷から少し離れた箇所にあった。ぱっと見は秘境にあるような屋根付きの露天風呂のそれだ。どうやら珠丸が整備したらしい。

「ほら、入ろう」

 なんと、私の目の前で珠丸が服を脱いだ。今の彼は何にも身にまとっていない。私は慌てて目線を地面にそらす。

「どうした?」

 恐る恐る彼の方を見ると、手ぬぐいで下腹部を巻いていたので少しほっとした。
 あ、でも今から私、脱がなきゃいけないのか……!

「すみません! あっち向いてくれませんか!?」
「あ、ああ……わかったから落ち着けって」

 いやいや、落ち着いていられるか!