珠丸は私の事をじっと試すように、見上げている。

「へえ……」
「しゅ、珠丸さん……」
「呼び捨てでもいいよ。俺も明子の事呼び捨てだし」

 珠丸……。というと、彼はにっと口角をあげる。

「かわいいな」

 彼の甘い吐息が鼻と口にかかってくる。何度そのセリフを吐かれても、私はまだ普通に受け取る事が出来ない。慣れるのかなあ……?

「まあまあ、食べよっか。飯が冷えるし」
「は、はい。そうですね……」

 私の様子を察したのか、それとも自らブレーキを踏んだのかまでは分からないけど、珠丸はまたいつもの様子に戻って炊き込みご飯をかきこみ始めた。

「美味しいですね。どれも美味しくて食べ過ぎちゃいそうです」
「おっそうか。嬉しいよ」
「牡蠣が食べられるなんて思ってなかったので……今度は煮つけや炒め物にしてみようかな」

 たわいない話をしながらご飯を食べていると、あっという間に日が落ちて夜が来た。屋敷の周りに洞窟内にいた羽虫風のあやかしが絶えず舞ってくれているおかげで、暗くはないけど現代の照明と比べるとやや明るさには欠ける。
 それでも、これはこれで風情があっていい。