どうやら彼の話を聞く限り、自炊は慣れたもんでむしろ得意な方だとか。いいなあ、料理男子かっこいいね。

「たまに都にある市場で野菜とか買うんだが、魚介類と合うよな」
「へえ……」
「仲間には種を貰って畑をやっているやつもいる」

 海坊主は漁で生計を立てているものがほとんどだが、中には田畑を耕し農作業をやっているものもいるという。

「人間と変わらない暮らしですね」
「そうだなぁ。言われてみれば人間と海坊主が結婚するのはよくあるな」

 えっ。そう言われてしまうと珠丸への意識を深めてしまう自分がいる。

「アンタと結婚するのもアリだな」
「へぇっ!? あ、いや、だって出会ったばっかりだし」
「すまん。姫様と俺とじゃ、身分違いか……」

 はは。と笑う珠丸。いや、身分違いとかそういうのはないんだよ。
 私がこういうの、慣れていないだけで。
 そうこうしていると、日が暮れていくのが木々の隙間から見えた。

「明子。このまま飯にしよう。ご飯も炊けそうだ」
「そうですね」
 
 炊けたご飯からは、良い匂いが湯気になって立ち込めていた。

「美味しそうですね、牡蠣の身もぷりぷりしてます」
「ははっ、いい感じに炊けたな」