砂浜まで行くと、珠丸が私の左手を大事そうに握って来た。彼の手はさっきまで海へ入っていたとは思えないくらいに温かい。

「さあ、帰るぞ」

 彼の横顔が爽やかでキラキラ輝いているように見えて仕方ない。またドキドキしてきたので目を伏せると、横からおいおい。と声が降りかかって来る。

「そういう所可愛いから好きだ」
「へえっ?!」

 ダメだ。好きだ。の一言が今の私にとっては爆弾そのものになっている。身体が熱くなって爆発しそうだ。

「ほら、早く帰るぞ」

 うっ、なんだか半殺しで放置されているような感覚だ……。何だろう、珠丸はこの手の駆け引きは上手いのかもしれない。そんな事絶対彼には言えないけど……。

 ◇ ◇ ◇
 
 屋敷に到着してからはあやかしに服を乾かしてもらったり、中庭で魚をさばいて、一部を開き干しにしたり、骨を全部取ってすり身にしたりと加工する。
 貝は身を取り出し、塩でもみ洗いしてから沸かしたお湯に入れて茹でる事にした。やっぱりこういうのはちゃんと火に通した方がいいもんね。

「牡蠣の身は米と一緒に炊いたらどうだ? 美味しいぞ」
「牡蠣飯ですか。いいですね」
「醤と塩を入れてみよう。あとショウガも切り刻んでいれてみるか」
「珠丸さんて料理、詳しいんですね」