「こんなもんでいいか?」

 あっという間に珠丸が近くにいた小鳥みたいなあやかしと共に私の部屋をセッティングしてくれた。家具はひじ掛けと棚を中心にシンプルイズベストに、かつ几帳も置いてくれている。

「ありがとうございます……助かりました」
「姫様の部屋ってこんな感じなんだろ? 仲間から聞いた」
「そんな感じだと思います」

 私もそんなに詳しくはないけど、確かにぱっと見は平安時代の姫様の部屋っぽい内装にはなっていると思う。

「じゃあ、次行っても大丈夫か? しんどいなら一旦休んでもいいけど」
「ああ、大丈夫です」

 しょうが入りのお白湯を飲んだ事で身体はちゃんと温まっている。
 
「んじゃ、教えるとするか」

 中庭で炊事と洗濯の仕方を教えてもらう。中庭には井戸があってそこから水をくむようになっていて、火おこしはあやかしの手を借りる事にした。
 その後も生活していくうえで必要な事を彼から聞き、頭の中に叩き込んでおく。

「他、何か聞いておきたい事とかあるか?」
「いえ、もう大丈夫です」
「そうか。じゃあ、さっさと食料を確保しに行こう。早くしないと日が暮れてしまう」

 え、もうそんな時間だった?
 そして言われてみればお腹が空いているような気がしてきた。逆に空き過ぎてお腹の音がならないくらいだという事をここで初めて知覚する。