「おいおい、どうしたんだよ。そんな顔を赤くしてさ」
「あ、いや……誰かから抱きしめられるなんて初めてなので……」
「俺達流の挨拶のつもりだったんだが……まずかったか?」

 いや! まずいって事はないです! むしろご褒美……いや、お仕置き? どっちだろう?
 とにかく私はこういうのには免疫が無いのだ。

「ははっ。アンタのそういう顔、もっと見たくなってきた」
「は、え?」
「なあ、もっとよく顔見せてくれよ」

 いや、ちょっと待って。あの、こんなに積極的だったの?!
 彼の潮騒の香りが更に私の鼻腔を濃く刺激してくる上に、潮騒の香りではない、甘い香りもしてきて……何というか何が何やら分からなくなっていく。

「かわいい顔だな。明子の顔は」
「あっ……ちょっと、ちょっと待ってくださいって」

 近づけて来る珠丸の顔の目の前に両手で壁を作って、平常心を取り戻そうとするも、中々うまく行かない。

「恥ずかしがらなくてもいいんだぞ?」
「そんな事言われても無理ですって! だって私そういう経験ないんですから……!」
「そうなのか。まあ、でもいつかは慣れると思うぞ?」

 そういうものなんだろうか? た、確かに経験すればするほど慣れは出て来るというものなのかな?